入学金はほぼ返金されない
そんな医学部受験の世界にあっても、今年は繰り上げが例年以上に活発だった。
一部の大学では3月31日を過ぎ、4月に入ってからも繰り上げ合格の連絡があり、鈴村さんによれば「入学式当日まで回す可能性がある」とする大学もあったという。また、補欠候補者だけでは欠員が埋まらず、補欠とされていなかった人にも繰り上げが回った例もあった。
「今年は共通テストの難化を見越して、国公立を狙える上位組が軒並み私立の『保険』を多めにかけてきました。また、これまで1月に前倒されることもあった学力試験の日程を2月1日以降にするよう文科省が徹底したことで受験日程が過密になり、安全志向が強まった印象です。その結果、本来の実力よりやや下のレベルの学校の合格を複数持つ人が増えて、繰り上げが多く回ったのだと思います」(鈴村さん)
しかし、この「繰り上げ前提」の構造は、受験生や保護者に大きな負担を強いる。ギリギリまで進学先を確定できず、1人暮らしの準備が間に合わずに入学当初ホテル暮らしを強いられたり、逆に予定していた引っ越しを取りやめたりするケースは毎年のように発生している。
また、金銭的な負担も深刻だ。大学入試に合格すると、期日までに入学金や初年度の授業料、教材費などの納入金を振り込んで入学手続きを進める。私立大医学部は入学金や授業料が高額で、納入金は安い大学でも300万円近く、高い大学では1千万円ほどになる。支払った後に辞退した場合、3月31日までならば授業料分は返金されるが、入学金は返金されないことがほとんどだ。
「私大医学部の場合、返金されない入学金はほとんどの大学で100万円から200万円に上ります。また、授業料は辞退すれば返金されるとはいえ、いったんは現金一括振り込みが原則ですから、複数の大学に入学手続きをすることになれば数百万円から1千万円以上を用意しなければなりません」(同)
この春、関西の公立大学医学部に入学した男性も、繰り上げ合格に翻弄されたひとりだ。男性は国公立大学入試の前期日程でこの公立大を受験。私立大も複数の大学に出願した。
公立大学は補欠合格を発表しておらず男性は「不合格」で、私立大も正規合格は1校。あとは補欠と不合格だった。唯一正規合格した私大は医学部のなかでも授業料が高額なうえに、1人暮らしをしなければならない。入学手続きは行ったものの、他大学の繰り上げがあれば辞退するつもりだったという。
