こうして百貨店や大手スーパーの後ろ盾もあり、一気に信用を取り戻した「ハーバー」は、その後順調に業績を拡大。現在は年間2200万個以上を製造・販売し、2022年度以降は毎年4〜8億円の売上増を実現するなど、まさに破竹の勢いである。
一度は消えた商品が、これほどまで大々的な復活を遂げられたのには、理由がある。
それは、ありあけが「旧有明製菓とは正反対の戦略」を取ったことが始まりだった。歴史ある商品を、新たな作り手として再び製造・販売する過程で、ありあけは何を守り、何を変えてきたのだろうか。
「あえて販路を横浜近郊に絞りこむ」戦略
ハーバー復活に際して、実行委員会を組織した藤木会長には、一つの志があった。それは、「横浜ブランドを復活させること」だった。
「当時、横浜土産と言えば『崎陽軒のシウマイ』か『ハーバー』くらいしか、認識がなかったですね。僕も厚木に住んでいた母から、『ハーバー買ってきてね』とよく頼まれてましたから」
そこで、ありあけが最初の戦略として打ち立てたのは、「あえて販路を横浜近郊に絞りこむこと」だった。
倒産前、旧有明製菓は「ハーバー」を横浜銘菓としながらも、東京や埼玉に直営店を出店していた。だが、ありあけは「どこでも売れればいい」ではなく、「横浜ブランドとして売る」ことを目的に、商圏を横浜・神奈川県内に狭める方針を示した。(現在、羽田空港と成田空港は「日本の玄関口」として捉え、戦略的に展開をスタートしている。)
現在、横浜を中心に直営店24店舗を構え、神奈川県内の百貨店や量販店、高速道路のパーキングエリア、駅のキオスクなど、取扱店舗は400カ所以上に上る。
デザインで打ち出した「横浜感」
さらに、2009年には横浜開港150周年を記念して、商品名を「ありあけハーバー」から「横濱ハーバー」へと変更。パッケージも、横浜にゆかりのある柳原良平氏のデザインへと一新した。
「会長が柳原先生へ手紙を書いたんです。そしたら、『私の絵でよろしければ、ぜひお使いください。ハーバーのために新しくオリジナルデザインを書きますよ』とすぐに返事が来ました」
そのとき出来上がったのが、「横濱ハーバー」「ミルクハーバー」「黒船ハーバー」「横濱ベイブリッジサブレ」の4種類のパッケージだ。
デザインが刷新されると、これまで以上に「横浜感」が強まり、観光客の評判を呼んだ。すると、既存の売り場が広がるのと同時に、売上は前年の1.3倍以上に伸長。度々催事出店していた横浜の三大百貨店、横浜高島屋・そごう横浜店・京急百貨店からも声がかかり、常設店をオープンする運びとなった。
あえて販路を狭め、パッケージデザインの変更で消費者へのコミュニケーションを刷新する。こうした取り組みが「横浜ブランド」というコンセプトを際立たせ、「ハーバー」のブランディングを強化していった。




