中国製EVの信頼性はまだ足りない

フィックス氏は、「中国製EVを正しく評価するには、寒冷時におけるパフォーマンス、安全性の問題、EVメーカーの長期存続に対する不安などの短所も併せて総合的に検討しなければならない」と指摘した。

さらにフィックス氏は、「米消費者は信頼性、リセールバリュー、安全性、ディーラーのネットワークやサポートを重視する。中国EVメーカーについては、これらの要素や情報が信頼できるレベルまで積み上がっていない。刺激的な宣伝(hype)よりも現実に即して議論すべきだ」と主張した。

まるでフィックス氏が、米消費者からの信頼がナンバーワンである日本のトヨタと、米主流メディアが懸命にヨイショする中国のBYDを比較しているように思えるのは筆者だけだろうか。

トヨタは「完璧主義」を捨ててはならない

このように、一部のアジア諸国など新興市場におけるBYDの猛烈な追い上げを受けるトヨタだが、品質・サービスへの信頼や安さ、地に足の着いた経営、さらに全方位戦略でこれからもライバルとの差別化を図れるのではないだろうか。

しかし、不安点がないわけではない。中国メーカーとの競争を念頭に置き、佐藤恒治前社長が最近、「状況が変わらなければ我々は生き残れない」と484社の部品サプライヤーが集まった首脳会議においてぶち上げ、協力会社に前例のない変革を促したという。

具体的には、数十年間にわたりトヨタが堅持してきた極めて厳格な品質基準を大幅に引き下げ、コストと資源の無駄を減らすことが示唆されている。

今後、目立たないしわや微細な変色がある部品など、機能や安全性に影響しない「欠陥」を容認する可能性があるわけだ。

だが、トヨタ車オーナーとしての筆者は、一抹の不安を覚える。確かに安全性や機能が損なわれないのであれば、コスト面での競争力の確保のために、少々のことは犠牲にするほうが望ましいのかも知れない。だが、トヨタの過度とも言える完璧主義こそ、消費者の信頼や安心感の土台ではなかったか。完璧主義は弱さではなく強さではないのだろうか。

確かに無謀な価格破壊で挑戦してくる中国メーカーは脅威だ。彼らとの戦いを意識したトヨタの新路線は当然、豊田章男会長の承認を得ていると思われるが、トヨタにとっては賭けと言ってもいい。その結果が見えてくるのは数年後だろうが、その頃にトヨタに対する世界の消費者の信頼が失われていないことを願わずにはいられない。

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