組織でトップに立つだけでなく、社会で大きな報酬を手にするのはどんな人か。

私は、組織には、ふたつの相反する利益が存在すると思っている。個人にとっての利益と、会社にとっての利益である。

普通には、個人の利益のためだけに仕事をする人もいなければ、会社の利益のためだけに仕事をする人というのもいない。お互いの利益がバランスするところを見つけなければ、関係が続かないからだ。

私の知人のSくんは、上司から「これから俺の言うことに、黙ってイエスと答えよ」と言われ、新プロジェクトの責任者に任命された。

Sくんが担うのは、売上の柱となり、かつ会社のブランド認知を高めるサービスの開発だ。責任は重大である。プレッシャーも大きい。会社のために何としても結果を出さなくてはならない、そんな意気込みで臨むのが普通だろう。

もちろんSくんもそうだが、それだけではなかった。

私は、この話を聞いたときのSくんの言葉が印象に残っている。

「辞令を受けたとき、真っ黒なこともたくさんやるだろうなと思った」

Sくんは、それ以上を語ったわけではない。

だが、私がこの言葉を聞いて、理解したのは次のようなことだ。

Sくんが、「真っ黒なこともやるだろう」と言ったのは、会社のために働きながら、自分の欲望も満たすということだ。

それは、会社のブランドを活用して人脈を広げることかもしれないし、新プロジェクトでの実績をプロフィールに加えることで、さらなるキャリアアップを図ることかもしれない。別の言い方をすれば、会社の利益のために、個人の欲をエンジンとして活用するというわけだ。