織田信長の妹・市を娶った浅井長政はどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「かなり逡巡して信長ではなく朝倉につくことを決めたようだ。その様子はNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』でも描かれたが、それとは別のシーンで『それだけはありえない』という描写があった」という――。
なぜ浅井長政は義兄・信長を裏切ったのか
織田信長は幕府軍を率いて、越前(福井県北東部)の朝倉義景を討つべく進攻した。朝倉方の城を順調に攻め落として、地域の拠点である金ケ崎城(福井県敦賀市)も攻略。いよいよ木ノ芽峠を越え、朝倉氏の本拠地である一乗谷(福井市)に攻め入るところだった。
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の第13回「疑惑の花嫁」(4月5日放送)では、放送終了直前に柴田勝家(山口馬木也)が織田信長(小栗旬)のもとに血相を変えて駆け込み、こう伝えた。「浅井長政、謀反にござります!」。
第14回「絶体絶命!」(4月12日放送)では、信長は長政の裏切りに大いに戸惑う。そりゃそうだろう。信長が朝倉討伐のために京都を発ったのは、元亀元年(1570)4月20日だが、その前月、近江の常楽寺で浅井長政(中島歩)と一緒に相撲を観戦し、そればかりか2人が直接、何度も対戦した。信長は妹の市(宮﨑あおい)を長政に嫁がせており、2人は義理の兄弟だったが、ドラマで描かれるかぎり、2人は政略結婚による義兄弟にしては仲睦まじく、一定の信頼関係を築いているように見えた。
信長は長政に、出陣の「真の目的は朝倉討伐だ」と打ち明けた。朝倉との関係が深く、嫡男の万福丸を朝倉に人質に出している長政にとっては、困った話だったが、異を唱える家臣は自分が説得すると信長に告げた。信長も万福丸は必ず救い出すと約束した。
その長政が自分を裏切ったなど、信長には信じがたかったのは、ドラマの流れからして、もっともだが、史実においても信長はこの「裏切り」にかなり戸惑っている。


