「輸入3%減」で「支払額2倍」になった例も
ホルムズ海峡への依存度は6%と低く、これはたしかに調達先多様化の成果と言える。だが、米エネルギーシンクタンクのIEEFAは、この数字には落とし穴があると指摘する。
同シンクタンクが発表した報告書のタイトル「多様化されたLNG調達戦略は世界的な価格急騰から完全には守れない」が、内容を端的に表している。日本のLNG長期契約は、大半が原油価格に連動している。調達先をいくら分散しようと、価格は世界市場で決まるため、世界的な値上がりから逃れられないとの指摘だ。
2022年のウクライナ危機でも、日本は同じ状況に巻き込まれた。当時、日本のLNG輸入に占めるロシア産の割合は、わずか8.7%にすぎなかった。それでもロシアが欧州向けパイプラインガスの供給を絞ると、世界のLNG価格は高騰した。日本の月間輸入額は2021年4月の2213億円から翌年8月には8780億円超へ、約4倍に膨れ上がった。
年間で見ると、変化はさらに鮮明だ。輸入量は3%減ったのに、輸入総額はドル建てで65%増。円安が追い打ちをかけ、円建ての支払額は98%増と、平時のほぼ2倍に達した。
今回のイラン紛争でも構図は変わらない。IEEFAによると、アジアのLNG指標価格JKM(日韓マーカー)はすでに2倍に急騰している。ホルムズ海峡経由の依存度が6%であろうと、世界市場で価格が跳ね上がれば、日本も同じ高値で買うしかない。
世界的にも余力はほとんどない
高値を抑えるには中東以外の代替の供給源が必要となるが、世界を見渡しても余力はほとんどない。
ケプラーの試算によると、アメリカやオーストラリアの設備はすでにフル稼働に近く、ナイジェリアやアルジェリアも原料ガスそのものが足りない。代替供給源を世界中からかき集めても、確保できるのは月200万トン未満。月580万トンに上る供給不足の3分の1にも満たず、穴埋めにはほど遠い。すでに大西洋岸産のLNGがアジアへ流れ始め、欧州に届く分が減っている。
欧州エネルギー大手のトップも危機感を隠さない。シェルのワエル・サワンCEOは3月にヒューストンで開催されたエネルギー国際会議CERAウィークで、イラン紛争に伴うホルムズ海峡の通航制限を受け、供給危機が拡大するおそれがあると警告した。同氏は米ビジネスニュース専門局のCNBCに対し、「最初に打撃を受けたのは南アジアだった。それが東南アジア、そして(日本が位置する)北東アジアへと広がり、4月以降は欧州にさらに波及していく」と語っている。

