イランによる事実上の“ホルムズ海峡封鎖”で、原油価格が高騰している。ガソリンや石油由来の製品の値上げがニュースで報じられているが、懸念は他にもあるという。海外メディアやシンクタンクなどは、世界的な“エネルギー争奪戦”の始まりを伝えている――。

電気代の値上げは避けられない

ホルムズ海峡の封鎖で、ガソリンの値上がりが注目されている。しかし真の脅威は、遅れてやって来る「電気代の値上げ」だ。

日本語で「電気代」と書かれたニュース見出し
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

日本政府が確保してきた石油備蓄は254日分。約4億7000万バレルは世界でも最大級の備えだと、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は評価する。

一方で心許ないのが、日本国内の発電量の3分の1をまかなっているLNG(液化天然ガス)の在庫だ。わずか400万トンに留まり、国内全消費量のおよそ3週間分しかない。LNGは極低温で保管する必要があり、長期備蓄が難しい。

イランをめぐる紛争で、日本の石油輸入の9割超が経由するホルムズ海峡が事実上封鎖された。石油備蓄がいくら潤沢でも、世界的なエネルギーの奪い合いと価格高騰から日本は逃れられないと、同研究所は指摘する。

日本の電源構成を見れば、事態の深刻さがよく分かる。日本の経済産業省の2024年度速報値によると、LNG火力が国内発電量の約32%を占め、最大の割合となっている。対して石油火力はわずか約7%。電力の安定供給には、LNGの安定調達が欠かせない。

アジアのガス価格は65%急騰

LNGの供給不足に関し、世界的にも危機感が広がっている。

ホルムズ海峡が事実上封鎖され、3月だけで世界のLNG月間供給量の約14%にあたる580万トンが市場から消えた。年間処理能力7700万トンを誇るカタール最大のLNG基地ラス・ラファンが操業を停止し、買い手各社に対し、不可抗力により供給を断念すると通知したためだ。

コモディティ市場データ分析企業のケプラーによると、欧州とアジアのガス価格は混乱が始まってから約65%急騰し、2023年3月以来の高値をつけた。投機筋による一時的な値動きではなく、現実の供給不足がそのまま価格に反映された結果だという。

日本で取引される電力先物も、即座に反応した。米金融情報サービスのブルームバーグによると、欧州エネルギー取引所(EEX)に上場する東京エリア2026年度のベースロード契約(24時間一定供給型)は3月3日に11%急騰し、1キロワット時あたり13.58円と過去最高値を更新した。

まだ1年以上先の契約がこれほどの値動きを記録したのは、中東情勢の緊迫化を受け、将来のエネルギーコスト上昇に備えるヘッジ買いが一斉に入ったためだ。関係者は共通して、今回のLNGの混乱で、日本の電気料金は確実に上がると読んでいる。