LNG不足は年単位で続く
イランの攻撃で、カタールが保有するLNGトレイン(液化処理設備)14基のうち2基と、GTL(天然ガスを液体燃料に変える施設)2基のうち1基が損傷した。年間1280万トン分のLNG生産が止まった。カタールのLNG輸出全体の約17%にあたり、年200億ドル(約3兆円)の収益が消えている計算だ。修復には3〜5年を要するという。
カタールエナジーは生産拠点ラス・ラファンへの攻撃を受け、LNGの全生産量について不可抗力(フォース・マジュール)を宣言した。その後も攻撃は続いており、カアビー氏は、「生産を再開するには、まず敵対行為が止まなければならない」と語っている。イランが報復の構えを解かない今、再開の前提すらまだ整っていない。
仮に報復態勢が早期に収束しても、すぐには回復しない。ケプラーが3月5日に公表した分析によれば、船舶が安全に航行できるようになった後も、カタール北部のLNG生産拠点ラス・ラファンの完全再稼働には約2週間かかる。紛争が長引けば、市場の前提を根本から見直さざるを得なくなるとも指摘している。
今後の供給拡大も、見通しが立たなくなっている。カタールが進める世界最大規模のノースフィールド・ガス田の拡張工事が全面停止しており、ロイターは1年以上の遅延が生じる可能性があると伝えている。LNG不足は、年単位で続く公算だ。
日本のLNG備蓄は“全消費量の約3週間分”
当然、政府としても手をこまねいているわけではない。こうした事態を想定し、一定の民間備蓄を確保してきた。経済産業省は、電力・ガス会社が保有するLNG在庫約400万トンが、ホルムズ海峡経由のLNG輸入量の「約1年分」にあたると強調する。
3月10日の電力・ガスの需給と燃料調達に関する第4回官民連絡会議でも、業界の受け止めは落ち着いていた。電気事業連合会の森望会長は、「直ちに安定供給に影響が出るものではない」と強調。JERAの奥田久栄社長も緊急本部を設置して対応にあたっていると説明した。山田賢司経済産業副大臣は、「短期的に安定供給に支障をきたす状況にはない」としたうえで、緊迫した情勢下では平時以上の官民連携が欠かせないと経済界に協力を要請している。
2021年にはLNG融通の枠組みが整備されており、事業者間で対処しきれない場合には、資源エネルギー庁が全国規模で調整に乗り出す。中東情勢の急変を受け、電力広域的運営推進機関は夏に向けた燃料在庫の臨時モニタリングにも着手する方針だ。
加えて、外交面でも模索が続く。アメリカの戦略国際問題研究所も取りあげているように、高市首相が3月初旬に国際社会と連携した外交的解決を呼びかけたほか、経産省はエネルギー供給への影響を評価するタスクフォースを設置した。
ただし、「短期的に支障なし」との判断は、あくまで供給の「量」についてのものだ。経済産業省が「約1年分」と説明するのは、ホルムズ海峡経由分との比較にすぎない。ホルムズ経由は日本のLNG輸入全体の約6%にとどまり、国内の全消費量を基準にすれば、同じ400万トンでも約3週間分しか持たない。

