“値上がり実感”までには数カ月
もっとも、LNGが急騰しても、電気代には即座に跳ね返らない。
日本の電気料金には「燃料費調整制度」があり、値上がりが請求書に表れるまでに数カ月かかるためだ。実際に各家庭に届く請求書に変化が見て取れるのは、まだ先ということになる。
だが、卸売市場ではすでに大幅な値上がりが見込まれている。ブルームバーグNEFのアナリスト、マリコ・オニール氏によると、東京の卸売電力価格は今年24%上昇し、平均15.6円/kWhに達する見通しだ。供給の混乱が長引けば、さらに25%高い19.6円/kWhまで跳ね上がりかねないという。仮にそうなれば、あのロシアのウクライナ侵攻に端を発した2022年のエネルギー危機以来の高水準となる。
燃料費調整制度を運用するのは、東京電力エナジーパートナーなど大手電力だ。毎月の請求額は、一定のタイムラグを経て、LNGや石炭の輸入価格に連動して上下する。
当の東京電力も、世界的なエネルギー情勢の変化や需給のひっ迫が生じれば、「燃料費調整額が大幅に増加する可能性がある」と公式ウェブサイトに注記している。いま起きていることは、まさにこの注意書きが想定している事態に他ならない。
「夏のエアコンシーズン」を電気代値上げが直撃
見落とされがちだが、この制度には数カ月のタイムラグがある。調整額の算出に使われるのは、貿易統計に基づく直近3カ月間の燃料価格の平均だ。それが電気料金に反映されるまで、さらに約2カ月かかる。つまり、3月に急騰が始まったLNGの価格は、3月〜5月の平均値として集計されたのち、早ければ8〜9月頃の請求書に本格的に反映される。
したがって、各家庭でこの値上がりを実感するのは今ではない。その意味では高市早苗首相の3月3日の衆院予算委員会での「直ちに上昇することはない」との答弁は正しい。ただし、3月で終了が予定されている補助金施策が延長されない場合、エアコンで電気使用量が大幅に増加する夏シーズンに、まさに電力価格の上昇が家計を直撃することとなる。
価格の上昇は、いつになれば収まるのか。
3月19日、カタール国営エネルギー企業カタールエナジーのサアド・アル・カアビーCEO兼エネルギー担当国務大臣が英通信社のロイターに語った見通しは、楽観を許さないものだった。

