体を動かして、食べて、喋る
運動系は胎児のときから発達しはじめます。人間の脳番地のなかで最初に発達し最後まで活動を続ける部分が運動系なのです。
常に活動をしている運動系は新陳代謝も活発なので、老廃物が速やかに排出されます。全脳番地のなかで認知症を引き起こす原因物質とされるアミロイドベータが最後にたまるのが運動系なのです。
人間にとって「動くこと」は生きていくうえで当たり前の活動ですから、「当たり前」に関わる運動系の活動が低下すること自体が、人体にとって危機的状況といえます。
運動系の活動量が落ちていくと、それに引きずられて全ての脳番地の活動も停滞していき、老廃物を排出する力も弱くなるためアミロイドベータは蓄積していく一方なのです。
反対に運動系を活発に使っていると、運動系はもちろん、それ以外の脳番地にもアミロイドベータがたまりにくくなります。散歩の例で示したように、運動系はほかの脳番地と連携する力が強いからです。
さて、運動系には、「手と足」「口の動き」に関わる部分もあります。
スーパーエイジャーを目指すなら、いつも、いつまでも「体を動かして(手と足)、食べて、喋る(口)」こと。若々しい脳をつくる秘訣です。
ちなみに、運動系とは逆に「最後に発達を始める」のはどこかといえば、それは「感情系」です。感情を発達させるには、各脳番地を自在に横断して使いこなすさまざまな経験が必要だからです。
スーパーエイジャーの皆さんの人生経験が刻み込まれている脳番地といえるでしょう。
「口」を動かせば人生が豊かになる
運動系の「口の動き」への意識の持ち方は大事。「口の動き」への関わり方ひとつで、脳番地全体が刺激を受けるチャンスが広がるからです。
「口の動き」は「咀嚼」「発声」「コミュニケーション」と目的が広いため、刺激する機会をつくりやすいといっていいでしょう。
咀嚼、発声、コミュニケーションの3つが揃っている「会食」や「お茶会」などは、絶好の脳番地トレーニング。特に発声を伴うコミュニケーションは運動系だけでなく、思考系、感情系、伝達系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系のすべての脳番地が刺激されます。
会食やお茶会の集まりをもつグループに所属しているのなら、ぜひ幹事を買って出てください。日程調整・出欠確認、お店選び・予約などは、思考系、理解系、記憶系を、さらに鍛えることができるからです。
もちろん、朝の散歩でばったり会ったご近所さんと立ち話で盛り上がり、「今日の午後、うちでお茶でもしない?」という気楽な集まりも脳番地は大歓迎です。
家に帰ったら、約束の時間から逆算して作業スタートです。リビング、トイレ、玄関と掃除を進めながらお茶請けを考え、客用の茶器を出したら茶葉の確認……。
いくつもの作業を進めるときの、ギュッと集中して複数の脳番地が緻密に動き出す感覚は心地いいものです。
日々、「脳番地を鍛えるために」という意識をもって、創意工夫の機会をつくって生活していくことはもちろん大事です。その一方で、食事会の幹事や、自宅に友人を招待するような、「誰かのため、みんなのため」「喜びや楽しみのため」という気持ちもまた、脳の若返りにはたいへんプラスになります。

