部下の成長を駆動するラポール
これら3つの要素が揃って初めて、上司と部下の間には本当の意味で健全な関係性が構築されます。
これは心理学で 「ラポール」 と呼ばれる、互いに身構えることなく安心して本音を交わせる状態です。
世界の一流の上司は、このラポールこそが部下の成長を駆動するエンジンであると理解しています。
逆に言えば、これら3つのうちどれかひとつでも欠けた瞬間に、部下の成長は止まってしまいます。
成果は出すものの、部下を見ていない上司や、人当たりは良いが判断や指示に一貫性がない上司は、部下の信頼や信用を損ないます。
仕事はできるが、部下のために動こうとしない上司や、部下の面倒見はいいが、結果に責任を取らない上司も、尊敬を得ることはできません。
こうした上司の下では、部下の中に「この人は信用できない」とか、「この人からは学ぶものがない」という感情が生まれます。
その際、部下は声を荒らげて反発するのではなく、表面上は指示に従いながら、内側では挑戦を避け、自身の成長を止めてしまいます。
組織にとって最も深刻な事態は、目に見える対立が起きることではなく、こうした静かな停滞が広がることなのです。
日本の上司は「関係」の構築が不十分
世界の一流の上司が部下との「関係」を重視しているのは、そこに信頼や信用、尊敬がなければ、「関係性」だけの結び付きになるからです。
関係性というのは、単なる「役割」を指します。
「上司はこの人で、部下はこの人」という関係性だけになると、上司は部下を指導する、管理することが役割となります。
部下は、上司に指導され、管理される役割を担います。
単純に関係性だけで結びついてしまうと、上司からの一方通行のマネジメントになって、建設的な仕事ができなくなるリスクが高まるのです。
日本企業の上司が部下の育成に苦慮している原因は、関係性だけがあって、3つの関係の構築が不十分であることが関係しています。
若手社員を育てるには、関係性だけでなく、関係に目を向ける必要があります。
上司に信頼されている、上司から信用されている、上司が尊敬の念を持って接してくれる……と感じることは、部下にとって「心理的安全性」が高い状態であり、モチベーションをアップさせる要因になるのです。
世界の一流の上司は、部下と3つの関係を築くために、次のことを意識して行動しています。
①好奇心や関心を持って接して、上司が「目を向けている」ことを示す
②部下に対するサポートを通して、「味方」であることを知らせる
③部下のキャリアにとって「価値」のある情報を伝える
上司の立場から部下を見下ろすのではなく、部下を「一人の人間」として尊重して、スキルレベルや本人の考え方、ジェンダーに応じた接し方を工夫することが大切です。

