零細農家の生産量はわずか2%
ところで、9942円というコストは、零細農家も大規模農家も含めた平均のコストである。
実際には、0.5ヘクタール未満の零細農家のコストは1万5948円であるのに対し、5ヘクタール以上では7907円、20ヘクタール以上では7010円である。規模の大きな農家のコストが石油価格等の上昇の影響を受けたとしても、以前の米価でも赤字になることはない。
零細な農家はこれまでもずっと赤字だった。町でコメを買うより自分で作る方が安上がりだから米作を続けてきた。かれらの主たる収入は、サラリーマン収入か年金収入である。米作が少々赤字でも生計が維持できなくなるわけではない。かれらは、かわいそうな貧農ではない。貧乏だと言われると侮辱されたと怒るのではないだろうか。
しかも、これら零細農家が生産するコメの量は全体の生産量からすればごくわずかである。食料供給の観点から重要なのは規模の大きい農家である。
日本農業の特徴は2%と50%である。戸数では2%の大規模農家が50%の生産をし、50%の零細農家が2%の生産しかしていない。零細農家の赤字幅が拡大して離農しても食料供給への影響はわずかである。
ホルムズ海峡封鎖で食糧危機は起きない
逆に米価の低下とコスト上昇で、彼らが農地を大規模農家に貸し渡し地代収入を得るようになれば、「より効率的で安定的な農業生産=食料供給」が実現できる。農業経済学者が脅すような“食料危機”は起きない。すでに、近年零細な農家が離農して水田は大規模農家に集積している。ホルムズ海峡の閉鎖は、この動きを加速させる。
さらに農水省は、2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学肥料の使用量を30%削減、化学農薬の使用量を50%削減、有機農業の割合を25%に拡大するという“みどりの食料システム戦略”を推進している。
石油や化学肥料等の価格上昇は、これらの資材の使用量を抑制することになり、“緑の食料システム戦略”に貢献する。農家に補助すれば、これに逆行する。

