2022年の酪農危機報道とそっくり

4年前の2022年、穀物価格の高騰で輸入トウモロコシを飼料として使っている酪農経営が悪化したと騒がれた。NHKクローズアップ現代などさまざまなメディアが、酪農家の離農が続き、このままでは牛乳が飲めなくなると報道した。危機を煽る学者はテレビなどに盛んに出演した。

しかし、その前の6年間ほど酪農家の所得は1600万円で酪農バブルと言われるほどだった。22年でも700万円の所得だった(図表1)。それなのに、酪農経営は問題ないという私の指摘や主張はマスメディアから無視され、政府からの補助を期待していた酪農家やその団体からは余計なことを言うなと強く抗議された。

では、あれから4年たって牛乳は飲めなくなったのだろうか? 生乳生産は好調で減少するどころか増加している。マスメディアも大騒ぎしたことを忘れているようだ。

【図表】酪農経営体当たりの所得と配合飼料価格の推移
図版=筆者作成

「農家=弱者論」のウソ

農家が貧しい弱者だと思い込んでいる人たちは、農家経営に影響が生じると補助すべきだという主張に共感する。農業界もこのような国民の心理に甘え利用してきた。先の酪農の例では、経営が苦しいことを理由に政府から補助を引き出そうと考えたのだ。

しかし、農家だから貧しいという状況は1960年代初めに消滅している。1965年以降農家所得はサラリーマン収入を上回って推移している。

小農の本業はサラリーマンなので貧しくはない。他方で、農家票が欲しい国会議員は、農家から陳情を受けると補助の実現のために農水省に働きかけを行う。さらに、国内農業に影響が出ると聞くと国民は食料供給に不安が生じると思う。これらが上記の主張の背後にある。

このような考えが正しいのか、ファクツ(事実)に基づき検証したい。