ジブリ風イラスト、YOASOBI風作曲、機密情報の漏えい……生成AIの業務利用においてはさまざまなリスクが考えられる。法的にどのようなリスクがあるのか。AIに関する法律に詳しい専門家が解説する。

創作的寄与が高くないと「著作物」にはならない

生成AIを仕事で使う際に、法律がAIをどのように規制しているのかを把握しておくことは、コンプライアンスの観点からも欠かせません。主な3つのリスクについて解説します。

【Risk1】著作権侵害

世の中にはさまざまなコンテンツがありますが、その中で特に「創作性」が認められるクリエイティブなものだけが著作権法で保護されています。単なる事実やアイデア、世界観は著作権法では保護されません。

例えば、生成AIで話題の「スタジオジブリ風」の画像。著作権法が保護しているのは具体的な「表現」なので、いかにもジブリ作品に出てきそうなキャラクターでも、実際の作品に登場する特定のキャラクターと同一または類似していなければ、直ちに著作権侵害にはなりません。しかしナウシカ、トトロなどの既成キャラクターと同一または類似していれば、著作権侵害のリスクは高くなります。

音楽も同様です。「YOASOBI風」の曲を作る際、あの疾走感のあるピアノのバッキングや切ないメロディといった「作風」が類似するだけなら著作権侵害とならない可能性が高いです。しかし、「アイドル」ほか特定の曲のメロディがそのまま残るような曲をAIに生成させて公表したりすると、著作権侵害の可能性が生じます。

著作権法は、人間が創作したものだけを著作物として保護しています。

防犯カメラが自動録画した映像は著作物とみなされないのと同様に、人間が何の指示もせず、AIが100%自律的に作ったものは「著作物」として保護されない可能性が高いといえます。

人間が生成AIに対して「こんなふうに文章を作って」と詳細に指示し、その結果生成されたものであれば、あくまで人間がAIを「道具」として使ったにすぎないものとして、著作物として保護される可能性が高くなるでしょう。一方、人間が具体的な指示をしていないのにAIが自律的にコンテンツを生成した場合、著作物とは認められない可能性が高くなります。

例えば「わが社の業績が低迷している。何か業績を上げる施策を考えて」と生成AIに相談したとします。これに対してAIが、「会社のロゴを変えましょう」と自律的に新しいロゴのデザインを作ったとします。この場合、新ロゴのデザインについて人間は何ら具体的な指示を出したわけではないため、新ロゴは著作物として認められないおそれがあり、著作権法による保護を受けられない可能性が生じます。

著作権法の保護を受けるためには、デザインについて詳細な指示を重ねたり、出力されたものに人間が手を加えたりするなどして、人間の創作的寄与を高める必要があります。

AIを用いて生成した著作物を利用する場合のリスクは、「AI生成物が既存の他人の著作物と似ているかどうかわからない」という点にあります。あなたがAIを利用して悪気なく作った作品が、結果的に既存の作品と酷似していたという事態は起こりうるのです。

(構成=西川修一)