日本の肥料はアメリカの倍

3月30日、JA全農は肥料価格の引き上げを農家に宣告した。これを問題視する農家や農業経済学者がいないのは残念である。

同じ価格の原材料を使いながら、日本の肥料、農薬、農機具の価格はアメリカの2倍もしている。6割から8割という圧倒的な市場シェアを持つJA農協が独占的な価格を設定してきたからである。

私が知っている北海道のコメ農家はJA農協から買わずに韓国から肥料を輸入している。JA農協より3割安くなるのだという。2012年ころ福井県のJA越前たけふが肥料を全農から購入するのをやめて独自開発したところ肥料の価格は2~3割安くなった。生産資材の価格が独占的な価格設定により、きわめて高く設定されていることが、農家の経営を圧迫し、日本の消費者に高い食料を買わせる一因となっている。酪農家が購入する飼料の価格も同じである。

JA全農が肥料価格を引き上げて、政府が農家に肥料価格の補助をすれば、儲かるのは全農で損するのは納税者・国民である。農家は政府に補助を求めるよりも、自らが主人であるJA農協に対して資材価格の引き下げを求めるべきではないだろうか?

手作業で畑に肥料をまいている
写真=iStock.com/VisualArtStudio
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困ると政府に援助を求めようとする農業者がいるのは残念である。私は、2014年米価が低落した際、ある女性農業者が言った言葉が忘れられない。

「弱音を吐いて誰かに助けを求めているようでは、農業は人から憧れられるような職業にならない」

このような農業者が多数になれば、国民は農業を真剣に守り育成しようとするのではないだろうか? それとも、ないものねだりだろうか?

食糧輸入にホルムズ海峡は関係ない

そもそも石油や肥料等の価格高騰でコメ農業が影響を受けたとして、それで食料危機になるのだろうか? この主張は、食料供給の主体が国内農業だけだと短絡的に思い込むという間違いを犯している。

『コメ高騰の深層 JA農協の圧力に屈した減反の大罪』(宝島社新書)
『コメ高騰の深層 JA農協の圧力に屈した減反の大罪』(宝島社新書)

平成のコメ騒動を思い出してもらいたい。あの時は冷害で26%の不作となった。260万トンの不足を政府は中国やタイなどから輸入することで埋め合わせた。2014年のバター不足を最終的に解決したのも輸入だった。

食料輸入はホルムズ海峡に依存していない。国内生産が影響を受けても輸入ができれば、日本に食料危機は起きない。すでに日本の食料自給率は38%。カロリーの6割強を輸入に頼っているのだ。

石油等の価格上昇で国際的な穀物価格も上昇するかもしれない。しかし、穀物価格が3倍になった時を含めて、カロリーの供給上重要な農産物である穀物と大豆の輸入額が全輸入額に占める割合は1~1.6%に過ぎない。日本が輸入できなくなることはない。

【図表】穀物の輸入額と総輸入額に占める穀物の割合の推移
図版=筆者作成