ホルムズ海峡封鎖の影響を検証

農家経営への影響はどのくらいなのか?

石油や化学肥料などの農業生産要素の価格が上昇すると農業経営に良くない状況が生まれることは当然だろう。ただし、それがどの程度なのか、それが他の産業に比べて農家の経営に補助しなければならないほどの悪影響を与えるのか、農産物価格にどれだけ影響するのかを検討する必要がある。

日本農業の代表的な作物で多くの報道で影響が生じるとされるコメについて検討しよう。

まず、今流通している2025年(令和7年)産は昨年収穫されたコメなので生産への影響はない。現在のコメの価格に影響が生じるとしても、それは物流コストが上昇することを通じた限定的なものに過ぎない。現在大量のコメ在庫があるので、コメの価格は下げの方向への力が大きく働くだろう。

影響が出るとすれば、今年(2026年)産のコメである。

米作について実際にかかった生産費(物財費という)9942円(60キログラムあたり2024年産米生産費調査/農水省「農業経営統計調査」より)のうち、石油が多くを占める光熱動力費は699円、肥料代は1303円、石油価格上昇で値上がりが予想される農薬代は1007円で、合わせて3009円、30.4%である。26年2月から3月にかけての軽油価格の上昇率は12%程度であるが、かりに、これらの資材価格の上昇を大きく見積もって50%としたとしても、米作の生産費を1505円、15%程度引き上げ、1万1447円とするに過ぎない。

コメ価格が戻っても収支はトントン

問題は、これが「雪崩を打って離農してしまいかね」ないという深刻な影響を農家経済に与えるのだろうかということである。

コストと比べるのは価格である。価格よりコストの方がはるかに大きければ、農業経営は大幅な赤字となり、離農を検討しなければならないかもしれない。

ではコメの価格はどうなのだろうか? 図表2は、JA農協がその手数料を入れて卸売業者に販売する価格なので、農家が受け取る価格はこれから3000円程度の農協手数料を引いた額である。2010年からこの15年ほど農家が受け取る価格はおおむね(60kgあたり)1万円から1万2000円ほどだった。しかし、令和のコメ騒動で2024年産は2万2000円、2025年産は3万3000円ほどに上昇している。

【図表】コメ価格の推移
図版=筆者作成

24年産や25年産のバブル米価では、1万1447円のコストでも大幅な黒字である。

現在大幅な在庫があるので米価の低下が予想される。これにコスト上昇を考えて農家が作付けを減少させれば、供給が減少して米価の下げ幅は少なくなる。バブルがはじけてそれ以前の米価に戻ったとしても、だいたい収支トントンである。

しかも24年産と25年産のバブル米価の貯えがある(25年産のコメ農家の一年の純所得を試算すると、10~15ヘクタール規模2000万円、15~20ヘクタール規模3000万円、20~30ヘクタール規模5000万円、30~50ヘクタール規模7000万円、50ヘクタール超規模1億円)。赤字になっても貯金を取り崩せばよい。22年の酪農と同じだ。