民主改革を先導したテイセイン現大統領出馬せず?

2015年は、ミャンマーの政治の行方を見極める大転換点である大統領選挙がある。ミャンマーの政治は安定するのか? また再び混乱するのか? この政治情勢について、10月末、大きなニュースがミャンマーの首都ネピドーから入ってきた。現職大統領で、軍事政権から民政移管を受け民主改革の旗振り役であるテインセイン大統領が、2015年の選挙に出馬しない意向であることが明らかになったのだ。これは、現与党(USDP)のトゥラシュエマン下院議長が現地メディア向けに明らかにしたもの。テインセイン大統領は、持病の心臓病を患いながら現任務にあたっているが、健康上の問題を理由に大統領選挙には出ないというのである。

現時点で、2015年の大統領選挙に意欲を示しているのは、この与党ナンバー2のトゥラシュエマン下院議長と、最大野党NLD党首のアウンサンスーチー女史の2名。このトゥラシュエマン下院議長、日本ではあまり知られていない。どのような人物なのか。元々、タンシュエ率いる軍事政権時代のナンバー3、軍の序列でナンバー4であったテインセイン現大統領よりも地位が高かった。故に、テインセイン政権の成立を好ましく思っておらず、政府と議会が対立する場面では、必ず保守派の代表として大統領との確執が噂されてきた人物だ。一見このような彼の経歴を見ると、保守派勢力を結集して軍政の復活を懸念する見方が出てきそうだが、ミャンマー現地では、トゥラシュエマンが大統領になって軍政が復活すると考える国民はほとんどいない。

ヤンゴンや首都ネピドーの現地関係者から話を聞くと、総じて、トゥラシュエマンは国民から支持されている事実に気づく。彼は、精錬潔白な人物であることを国民にアピールしており、「軍人時代を含め、個人的に不正を犯したことは1度もない」と、国民を前にした演説で述べたりしている。また、彼は、アウンサンスーチー女史率いる野党NLDとの連携について、国家国民の利益のために協力関係を柔軟に検討したいと発言したり、2015年の総選挙後のNLDとの連立政権の可能性についても言及している。現地では、2015年の総選挙は、現与党USDP、野党NLDのどちらかが圧勝するという状況にないことを踏まえ、トゥラシュエマンとアウンサンスーチー女史との間にはすでに連立政権の盟約がなされていると話題になっている。