中小企業が大手企業に打ち勝つ方法は何か。アスクル創業者の岩田彰一郎氏は「アスクルは元々、中小事務用品メーカーの一事業だった。当時、大手企業の“囲い込み”によって不遇の立場だったが、ある方法によって大手企業に一矢報いることができた」という――。

※本稿は、岩田彰一郎『起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ノート、クリップ、はさみなど、さまざまな事務用品
写真=iStock.com/akinbostanci
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アスクルが生まれた背景

アスクルは、1993年に、事務用品メーカーであるプラスの社内ベンチャーとして始まりました。

その最大の目的は、プラスの商品を拡販することで、長年、後塵こうじんを拝していた最大手メーカーに勝つことでした。

背景にあったのは、流通支配型メーカーによる独占構造です。

1980年代まで、多くの業界では、大手メーカーがリベートや報奨制度などで小売店を囲い込み、自社商品を優先的に扱わせて、ライバルメーカーの商品を排除することが行われていました。

文具業界もその例に漏れず、業界最大手のメーカーが独占的な力を持ち、街の文具店ではそのメーカーの商品が優先的に扱われていました。そのため、プラスの商品はなかなか扱ってもらえませんでした。

私も、1980年代後半に、その独占構造の壁にぶち当たり、悔しい思いをした経験があります。

当時、私は新商品の開発プロジェクトチームの責任者を任されていて、スタイリッシュで機能性も高い文具を開発しました。消費者調査では大好評で、これなら最大手メーカーにも対抗できると、自信を持って売り出しました。

ところが、発売されると、その自信は打ち砕かれました。まったく売れなかったのです。

良品なのに売れなかった理由

理由は、最大手メーカーの商品よりも劣っていたからではありません。店頭に並べてもらえなかったからです。当時、文房具店は全国に3万5000店ほどあったのですが、置いていただけたのはわずか200店ほどでした。

なぜ置いていただけないのかというと、最大手メーカーの商品を売るほうが業界内の地位があがり、たくさんリベートがもらえるからです。

店頭でライバル商品と比較されて、お客様の評価で売れなかったのなら、納得できます。しかし、店頭にも並べてもらえず、お客様が目にすることすらないというのでは、泣くに泣けません。

長年、このような業界構造に苦しんでいたので、プラスの社長は親の代から「最大手メーカーに一矢いっし報いたい」という強い思いを持っていました。それは私も同じでしたし、プラスの全社員が同じ思いだったでしょう。

どうすれば最大手メーカーに勝てるのか? その方法を議論するために、プラスでは1990年に「ブルースカイ委員会」を立ち上げました。今泉嘉久いまいずみよしひさ社長(当時)や2人の役員に加えて、慶應義塾大学の井関利明いぜきとしあき先生(現・同大学名誉教授)、事務局として、商品開発の責任者をしていた私もその委員会に参加し、意見を述べました。