ビジネスモデルが秀逸なほど周囲との摩擦が起きる。どう立ち回ればよいのか。アスクル創業者の岩田彰一郎氏は「既得権益者や小売業界との摩擦に頭を悩ませた。しかし『すべてのパートナーは対等であるべき』という信念を貫き通した結果、業績が伸びた」という――。

※本稿は、岩田彰一郎『起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

電車に乗る人
写真=iStock.com/bee32
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既得権益者との戦い方

これまでにないビジネスモデルの事業が軌道に乗るのは経営者にとって大きな喜びです。しかし、喜んでばかりはいられません。多くの場合、新たな問題に見舞われることになります。

それは、既得権益を持っている組織からの圧力や抵抗です。

たとえば、競合他社が同様の事業を立ち上げ、ベンチャー企業では対抗できないほどの広告費を投入して、つぶしにかかってくる。こうしたことは、どの業界でもよくあります。

実際には、さらに陰険なことが裏で行われていることもあります。「あの会社と取引をするなら、当社との契約を解除する」などと圧力をかけて、商品の仕入れや卸売りを妨害するようなことです。

こうしたことを仕掛ける人や組織には、いろいろなパターンが考えられます。

1社だけが行っていることもあれば、複数の会社が結託しているケースや、業界団体が圧力をかけてくるケースもあります。業績不振に陥った会社の社員や個人事業主が単独で行うこともあり得ます。

ビジネスモデルが秀逸だからこそ、激しい圧力や抵抗にあうといえるでしょう。

経営者から見れば、「そんな圧力や抵抗には屈しない」といいたくなるところです。

しかし、事業を成功させることを考えると、徹底抗戦だけが正解なのかはわかりません。長期的な視点で判断すると、少しは妥協をしたほうがいいのかもしれません。

どのような対応をするのがベストなのか、いざとなると判断に迷うのではないかと思います。

絶対にやらなかった「既得権益者の優遇」

アスクルのビジネスモデルも、卸業者さんや小売店さんを介さずに、直接お客様に商品を配送するというものですから、卸業者さんや小売店さんの反発にあうことが予想されました。

そこで行きついたのが、先ほども触れたエージェント制度です。

エージェント制度は、お客様の開拓や与信・回収のコストを抑えるための制度であると同時に、卸業者さんや小売店さんとの共存共栄のための制度でもあります。

既得権益者とうから対決するのではなく、妥協して事業をあきらめるのでもなく、仲間になることを考えたのです。

ただし、エージェント契約をするに当たって、既得権に配慮して条件を優遇するようなことはしませんでした。

たとえば商圏についても、「長くこのエリアで営業してきたので、このエリアは自分たちだけの営業エリアにしてほしい」といわれても、認めませんでした。どのエージェントさんと契約するかはお客様が決めるというルールにしました。

手数料率や支払いサイトも、規模が大きいエージェントさんだから優遇するといったことはせず、すべてのエージェントさんを同じ条件にしました。