圧力に屈しないが反対派の排除もしない
こうした業界の反発に対して、割引販売をやめるという選択肢もあったかもしれません。しかし、私は事業の方針を曲げるつもりはありませんでした。
とはいえ、敵対するつもりもありませんでした。
もともと私たちは、既存の小売店さんの売上を奪うのではなく、小売店さんにエージェントさんになっていただくことで、共存共栄したいと考えているわけです。ですから、はじめは反発していた小売店さんがエージェントになりたいと希望したら、排除するようなことはしませんでした。
アスクルが成長するにしたがって、反対派から転じてエージェントさんになる小売店さんも増えてきました。
そして、成長を続けるうち、業界からの反対運動は、いつの間にか消えていきました。
この事例は、一見、「既得権益を持つ抵抗勢力と真っ向から対決し、アスクルに賛同するメーカーさんやエージェントさんとだけ取引をした」というように見えるかもしれません。
反対運動があっても、アスクルに賛同してくれたメーカーさんやエージェントさんに頑張っていただけたからこそ、反対派が軟化した側面があるのは事実だと思います。
しかし、繰り返しになりますが、反対運動をしていた小売店さんなどを敵視するのではなく、いつでも仲間として迎え入れるという姿勢を貫いていました。だからこそ、反対派から転じてエージェントさんになった小売店さんが増え、文具業界からの圧力が弱まったのではないでしょうか。
既得権益を持つ勢力に屈しないけれども、排除することなく、仲間に迎え入れる姿勢を持つ。新規事業を行う時は、そんなスタンスでいることが大切だというのが、私の実感です。


