「ムダなこと」が事業のタネになる
ある時、その委員会で、社長が疑問を口にしました。
オフィスビルの搬入口を朝から晩まで見ていると、たくさんの業者が、それぞれの配送車で、ひっきりなしに出入りしている。これは非常に効率が悪いのではないか、という疑問です。
確かに、各業者がそれぞれに配送車とドライバーを用意するのでは、全体として見るとムダが生じているはずです。オフィスで必要なものを、まとめて配送するサービスがあれば、そのほうが効率的です。
また、この光景からもうひとつ見えてくることは、大企業は中小企業よりも、圧倒的に有利な条件で商品を買っているということです。
大企業は、電話やFAXで注文すれば、無料で商品を配送してもらえますし、値段も安くしてもらえます。一方、中小企業は、そんなサービスは受けられませから見れば公平とは思えません。
そこで、ブルースカイ委員会では、2つのキーワードが出ました。
ひとつは、「プラスにとって、お客様は誰?」。
これは、流通の方ではなく、最終的に商品を使う方、つまり、消費者、そして企業だと提起しました。
2つ目のキーワードは、「社会最適であるか?」にしました。
先述した状況は「社会最適」とはいえません。
社会最適にするためには、中小企業向けに、オフィスで必要なものをまとめて配送するサービスがあればいいのではないか。
お客様に直接配送すれば、小売店に商品を並べてもらえないという問題も解決します。
こうして、アスクルの事業アイデアが生まれたのです。
「社会最適」にするために変えたこと
オフィスで必要なものをまとめて配送するとなると、卸業者や小売店を介さずに、直接お客様に販売することになります。
従来の流通では、メーカーとお客様の間に卸業者や小売店が介在していました。これは、物流インフラやコンピュータが発達していない時代には、お客様にいち早く商品をお届けするために合理的な仕組みでした。卸機能も長い歴史を持つ社会システムとして、立派に機能しています。
しかし、物流インフラが整い、コンピュータで在庫を管理できるようになるなど、情報システムが進化すると、効率的とはいえなくなり、むしろ弊害のほうが目立つようになっていました。間に入る業者が多い分、多くのマージンが発生し、小売価格が高くなりますし、配送のコストも余計にかかります。
直接お客様に商品を販売すると、卸業者や小売店を介さない分、商品の原価が下がるので、安く販売できます。配送に関しても、これまでよりも少ない台数の配送車で、お客様のもとに素早く商品をお届けできます。
ただ、お客様に直接販売するためには、流通だけを再構築すればいいわけではありません。当然のことですが、お客様からご注文をいただかなければなりません。
しかし、お客様を開拓するには、大変なコストがかかります。

