どこか未完成、だがそれがいい
つまりジムニーノマドは、利便性が上がったとはいえ、根本は悪路走破性に特化した硬派なクロカン4WDそのもの。
小沢も公道を走って感じましたが、同じ5ドアSUVとはいえ軽乗用車のスズキハスラー、リッタカーのスズキフロンクスやトヨタヤリスクロスとは快適性の“質”が違います。
最新ナビこそ付きますが、メーター類はいまどき完全なるアナログ2眼です。
走りにも本格ラダーフレーム付きボディならではのギクシャク感が残っていたり、縦置きエンジンSUVならではのリアシートの狭さやボール&ナット式ステアリングならではのフィールの甘さが感じられたり、最新FFプラットフォームベースのSUVを比べるとどこか未完成なのです。
ただし、それでもノマドはなぜか妙に楽しい。例えばステアリングフィールは緩さの中にも機械を操っている手応えがあり、段差でギクっと衝撃が入る乗り心地に不思議な懐かしさがあります。コレは小沢が今やアラ還のクルマ好きということもありますが、若い人も意外と同様に感じているようです。
こんな魅力を持つ車は他にない
ノマドにはジムニーが5ドア化して便利になった魅力と、古典的な箱型デザインに回帰したファッショナブル性能、古典的でメカニカルな操作フィーリングが同居しています。
言わば、モダンで都会的なクオーツ時計の中で異彩を放つ、シンプルかつミリタリーな機械式時計のようなものです。イタリアのパネライとは言いませんが、セイコーの正確かつタフで壊れない機械式ダイバーズウォッチのような距離感。
そういうタッチであり、魅力を持つクルマが今はほぼ皆無なのです。ノマドはジムニーという超アナログなSUVを56年間も作り続けてきたスズキだから生み出せたある種奇跡のプロダクト。しかも当初はここまでの大衆受けを全く狙っていなかった。だからこそ逆にここまで大ヒットしたのかもしれません。
こういう奇跡が時々生まれるから自動車評論はやめられないのです。



