最大の要因は「ディズニー体験」の変質

舞浜駅の利用者は増え、ディズニーパークの売り上げも過去最高を更新している。にもかかわらず、イクスピアリにはかつてのような熱量が感じられない。その最大の要因は、「ディズニー体験」そのものの変質にあるといえるだろう。

近年のパークは、チケット価格の高騰や有料パス(DPA)の普及、年間パスポートの事実上の廃止によって、一回の来園が「高単価で濃密な非日常体験」へと進化した。

「せっかく高いチケット代を払ったのだから、できるだけパーク内で過ごしたい」「元を取りたい」。こうした心理が働く中で、かつてイクスピアリが担っていた「予定のない寄り道」や「パークの合間の息抜き」といった余白の時間は、真っ先に削ぎ落とされている。

「物語」というコンセプトのズレ

もう一つ見逃せないのが、施設が掲げてきた「物語」というコンセプトと、現在の利用実態とのズレだ。

イクスピアリは本来、観光地でも地元の商業施設でもない、唯一無二の「街」として構想された施設である。イクスピアリの初代社長である加賀見氏は、「街が店を創り、店が街を創る。これがどこにもない雰囲気を醸し出す」(前掲書 p.172)と語っている。

しかし現在、テナントは日常的なチェーン店が中心となり、一方で外装や街並みだけが強い物語性を残している。偶然の発見やそぞろ歩きを前提とした「入り組んだ路地」という設計思想は、失敗を避け、最短距離で目的を達成したい現代のゲストにとって、魅力というより「時間的コスト」に近い存在になりつつある。

結論として、イクスピアリが「ガラガラ」に見える正体は、単なる集客不振ではない。パークの熱量が高まりすぎた結果、ゲストは「街」を楽しむ余裕を失い、利便性の高い入口付近や一部の店舗だけが消費される。広大な敷地の大半が、「滞在の場」ではなく「通過するための空間」となっているのだ。

(初公開日:2026年1月31日)

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