「すたすた通り過ぎる」人たちの多さ

そもそもイクスピアリとは、どのような施設なのか。

公式サイトによれば、その名称は「体験」を意味するExperienceと、ペルシア神話の妖精Periを組み合わせた造語で、「世界中どこにもない街」をテーマに掲げている。架空の歴史を持つ9つのゾーンで構成され、ゲストが物語の世界をそぞろ歩きしながら買い物や映画を楽しむことを想定した施設だ。

実際、地上4階建ての館内は、入口側の「タウンエリア」から奥の「シネマエリア」へと、ひと続きの「街」として構成されている。歩き始めてまず印象に残るのは、一般的なショッピングモールにはあまり見られない、華やかな内装やテーマ性の強さだ。街並みそのものが架空の物語を持ち、「ディズニーに来た」というワクワクした気持ちを自然と引き出してくれる。

一方で、入口付近のにぎわいを抜けて奥へ進むにつれ、館内の雰囲気は少しずつ落ち着いていく。ベンチでスマホを操作したり、休憩したりする人はいるが、店舗内は無人という光景も少なくない。週末は平日より人出こそ増えるが、「店に人が入っているか」という点では大きな差は感じられなかった。

イクスピアリのマップ。駅側にタウンエリアがあり、施設奥側には映画館やホテル、劇場などがある。エントリープラザ付近は人通りが多いが、シネマエリアに入るあたりで少しずつ人が減っていく。イクスピアリHPより
イクスピアリのマップ。駅側にタウンエリアがあり、施設奥側には映画館やホテル、劇場などがある。エントリープラザ付近は人通りが多いが、シネマエリアに入るあたりで少しずつ人が減っていく。イクスピアリHPより

とくに印象的だったのが、店にも商品にも目を向けず、施設内を一直線に通り抜けていく人々が一定数いることだ。彼らの後を追うと、その動線はアンバサダーホテルや駐車場、さらにはオリエンタルランド本社へと続いていた。

つまり、施設内で目にする人流のすべてが、消費を目的としたものではない。イクスピアリは、生活圏と職場を結ぶ「近道」としても機能しているのだ。

本来、滞在を前提に設計された街が、今は「通過するためのインフラ」として使われている。この消費を伴わない人流の存在こそが、イクスピアリに漂う独特の「ガラガラ感」を生んでいるのかもしれない。

イクスピアリが目指した「路地の楽しさ」

イクスピアリの大きな特徴は、緻密に作り込まれた「物語」を前提とした街の設計にある。たとえば2階シネマエリア入口の「シアター・フロント」は、1920年代の華やかなショービジネス街をイメージしてデザインされている。

しかし実際に歩いてみると、この精巧な構造が必ずしも「回遊」を生んでいないことに気づく。入り口から最も遠いシネマエリアに近づくほど、舞浜駅の喧騒が嘘のように静かになる。入り口から奥へ、下から上へと進むにつれて、人流の密度が急速に薄れていく様子がはっきりと分かるのだ。