フードコートで“夢の国疲れ”を癒やすのは「うどん」
続いて1階のフードコートをのぞいてみた。11時台には3割ほどだった席も、12時を過ぎると7割ほどが埋まる。パソコンを開いて仕事をする人の姿もあり、観光地というより平日の駅ビルに近い雰囲気だ。
興味深かったのは、ゲストが選ぶメニューの中身である。筆者は「ディズニー感」を意識したミートボールとポテトのセットを注文したが、周囲で多く選ばれていたのは、うどんや丼といったごく普通の日本食だった。隣接する1階レストラン街でも、比較的混雑していたのはマクドナルド程度で、他店には余裕があった。
この傾向は週末でも変わらない。土曜日はファミリー層が中心となるが、やはり選ばれているのは、うどんや丼などの「日常食」だった。
高密度な非日常体験を重ねたあと、ゲストが求めているのは非日常の延長ではない。刺激の強さから一度離れ、ホッと一息つける食事だ。重視されているのは「発見」や「物語」ではなく、迷わず選べる確実性と、心身を休ませるための平常運転である。
結果として、イクスピアリが用意してきた「架空の街の物語」は、レストラン街でもフードコートでも、現在のゲストの消費行動と少しずつズレ始めているように見える。
データが示す「パークの独り勝ち」
現場で感じた温度差は、数字の上にもはっきり表れている。
JR東日本のデータによれば、舞浜駅の1日平均乗車人員はコロナ前の2013年から19年頃は8万人弱で推移し、コロナ禍の2020年には約3万8000人まで落ち込んだが、2024年度にはコロナ前の平均を上回る約8万6000人へと増加。駅周辺の人流は確実に増勢にあり、その人流と消費の双方を最も強く引き寄せているのが、TDR本体である。
オリエンタルランドの2026年3月期第2四半期決算を確認してみると、テーマパーク事業が2517億円(前年同期比129億円増)、ホテル事業が561億円(同58億円増)と、いずれも好調で、売上高は過去最高となった。
一方で、イクスピアリを含む「その他の事業」は売上高82億円と前年並みにとどまり、イクスピアリ単体でも売上高は2024年3月期の約64億9000万円から、2025年3月期には約58億8000万円へと減少に転じた。設備投資やテナント入れ替えによる影響は考慮すべきだが、パークやホテルの成長スピードと比べると、明らかに差がある。
重要なのは、舞浜を訪れる人が増え、パーク内での消費額も拡大する中で、イクスピアリがその流れを十分に取り込めていない点だ。広大な敷地と緻密な物語を持ちながら、実際に消費が生まれているのはごく一部のエリアに限られており、この構造的な歪みが数字に表れている。

