トヨタのプリウスはアメリカで長年にわたり高い人気を誇っている。だが発売当初は、同価格のガソリン車よりも走り、快適性、安全性において劣っているとされた。それがなぜベストセラーカーとなったのか。アメリカの行動経済学者、ウリ・ニーズィーによる『インセンティブが人を動かす』(訳:児島修、河出書房新社)より、一部を紹介する――。
性能は「粗悪」でもプリウスにあった唯一無二の強み
1999年、トヨタとホンダは、ハイブリッドカーをわずか数カ月の差で矢継ぎ早にアメリカ市場に投入した。それは、史上初めて量産化された、待望のハイブリッドカーだった。両社は序盤こそ競い合っていたが、わずか数年後にはトヨタが市場を制し、プリウスは記録的なヒット作になった。ホンダのハイブリッドカーは惨敗した。
トヨタは、どのようにしてこれほど多くの顧客にハイブリッドカーを購入させることに成功したのだろうか? なぜ、ホンダはそのことに失敗したのだろうか?
初期のハイブリッドカーは、燃費以外のあらゆる点で普通の車に劣っていた。同等の価格のガソリン車よりも、速度や加速、快適性、安全性などの面ですべて劣っていた。このような粗悪な車を売り出していたら、トヨタは顧客を獲得できなかったはずだと思うかもしれない。
たしかに、これらの欠点は課題をもたらした。しかし、それはチャンスでもあった。なぜなら、客観的に見て「粗悪」であるにもかかわらず、環境に優しい車を購入することは、ドライバーの環境意識の高さを示す強いシグナルになったからである。

