一歩踏み込んだ回答を引き出す方法
たとえば、まだまだコロナ禍が騒がれていた2022年、『銃・病原菌・鉄』(草思社)などで知られるカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジャレド・ダイアモンド教授にインタビューをした。テーマは「国家の危機」だ。
ご存じの方も多いかもしれないが、彼は多くの作品を世に送り出しており、しかもどの著作も等しく長い。当然、英語の原著をじっくり読んでいたら、あっという間に取材当日になってしまう。
そこで、話題となっている著作、そして最新作には目を通しておいた。せめて、それらの概要や主張、あらすじのポイントくらいは把握しておかないと、相手に足元を見られてしまうのは、火を見るより明らかだったからだ。
事実、もし私が彼の最新刊『危機と人類』(日本経済新聞出版)をろくすっぽ読まずに「コロナ禍についてどう思いますか?」などと質問したら、まず間違いなく「それは、『危機と人類』に書いてあるから読んでおいてほしい」と冷たく返されていただろう。
だが、前述のように私は事前に同書に目を通していた。だから、通り一遍の質問にならぬよう、「あなたは、危機こそが人や国が学ぶチャンスだと言いますが、このパンデミックから我々が学べることは何でしょうか?」と質問できたのだ。
すると彼は、「フィンランドのような国になれ」と答えた。そして、それに続いて「新型コロナは気候変動、資源枯渇、格差と同様だ」と述べたのである。これはどういうことか。
フィンランドは第2次世界大戦でロシア(ソ連)から攻め入られたことを教訓に、常に悪い事態を予測しているため、コロナ流行の3年前にすでにマスクを備蓄していた。前者の答えは、そうした国としての姿勢をフィンランドに学べということだ。
最短、最速で資料を読み込める方法
そして後者は、新型コロナはグローバルな解決が必要だが、グローバルな問題はそれだけではない。気候変動、資源枯渇、格差もまた新型コロナ同様、解決へ向けてグローバルな取り組みが必須だという指摘である。そして、その点において日本人も傍観者ではいられないという旨のことを語っていた。
こうした受け答えができたのは偶然ではない。先述した彼の最新刊『危機と人類』の日本語文庫版が、「世界的危機としてのコロナ禍」という寄稿から始まっていたのだ。そしてそれに目を通していたのは、私流の「準備の方程式」に則ってのことである。
すなわち、前述したように時間がないときに、準備に多くをかけることはできない。そのため私が常に資料を読む際に心がけていることがある。
それが、最初と最後だけしっかり読むということ。そのうえで、項目ごとに最初のほうだけ目を通しておくというものだ。これが、間違いなく最短、最速で資料を読み込める方法であろう。
どんな資料でも、最初に読む人の目を引くネタを載せているはずだ。先ほどのジャレド・ダイアモンドの本で言えば、冒頭の「世界的危機としてのコロナ禍──日本語版文庫に寄せて」と、ココナッツグローブというクラブでの火事について書いた「プロローグ ココナッツグローブ大火が残したもの」がそれに当たる。

