時間をかけない「準備の方程式」を用意する

そこを読むだけで、コロナという当時の最新事象に対する彼の考えと、危機に際し国民がどう対応するのかという主旨がわかるわけだ。

あとは章ごとに頭の部分だけ、さっと目を通す。ただし「第8章 日本を待ち受けるもの」だけ、やや細かく内容を追い、そして最後の「エピローグ 教訓、疑問、そして展望」を一読。これで終わりだ。

もっとも、この最初と最後だけ読むことについて、おそらくビジネスパーソンなら慣れているのではないか。たとえば、ビジネスの現場で使われるパワポの資料や、あるいは白書などの公的な文書を思い返してほしい。

いずれも、冒頭に要約があり、重要事項が番号を振られて羅列され、そして結論が当たり前だが最後に待っている。こうした明示的な重要ポイントだけを読み込んでから会議に出席する、ということも間々あるはずだ。

ディスカッションするビジネスマン
写真=iStock.com/Tapanakorn Katvong
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私がやっているのも、それと大差ない。ここで言いたいのは、つまりは「枝葉末節は捨てていい」ということだ。

何度も繰り返すが、質問の目的は聞きたいことを聞き出すことである。だからこそ、話の主導権をしっかりとグリップするためにも、最低限の前提だけは把握しておかなければならないのだ。

もちろん、準備に抜かりがないに越したことはない。ただ、私たちが臨むのは何年もかけて準備する大学入試ではないのだ。往々にして短期決戦が要求される。だからこそ、時間をかけない「準備の方程式」を用意しておくべきなのである。

CONCLUSION
自分なりの「準備の方程式」が
短期決戦には不可欠である!

“逆算”をすれば、時間は必ずつくり出せる

前項で見たように、質問力を上げるためにも“正しい準備”はマストの事項だ。ただし問題は、忙しい日々を送る人にとって、準備の時間にどれだけ時間を割けるかだろう。おそらく、十分に準備する時間を取れる人は、ほとんどいないのではないか。

しかも、とりわけそれなりに“上”の人とのアポ取りは、急に決まることが多い。当然、ただでさえ忙しいなか、きわめて短い時間しか準備に使うことはできないはずだ。

私もそんな経験を何度もしてきた。なかでも、群を抜いて急に決まったのが、長崎県出身のイギリス人作家で、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロをインタビューしたときのことだった。

ノーベル文学賞受賞より11年先立つ2006年、私は当時、別の仕事でロンドンにいた。そこで、たまたま前年の2005年に出た『わたしを離さないで』に出会い、ざっと目を通したところ類まれなる面白さを感じた。

そこで、彼がどんな人物なのか取材してみたいと思い立ち、ダメ元でエージェントを通じてインタビューをしたいと申し込んだ。すると、何と「明日ならインタビューOKだ」という返事が来たのだ。

私はうれしさとともに、困り果ててしまった。なぜなら、『わたしを離さないで』の概要は把握していたものの、しっかりと読んではいなかったからだ。

インタビューできることになったとしても、どうせ先のこと。だったら、それまでに読んでおけばいい、と軽い気持ちで申し込んでいたのである。