日本中の期待を背負って、応えた26歳
2013年6月4日の夜、サッカーの14年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会アジア地区最終予選で、日本代表はオーストラリア代表と対戦し、後半ロスタイムに本田圭佑選手がペナルティキック(PK)を決めて相手に追いつき1対1で引き分けた。そのとき、勝ち点14となった日本は、Bグループの2位以内を決め、5大会連続5度目のW杯出場切符をつかんだのである。
私はあまりスポーツ観戦をしないし、またその日は火曜日だったので、大学でゼミがあり、通常19時ぐらいまで続くので、本来であれば、試合を見ることができないはずである。だが、この日は、学生たちの「先生、今日は5時半でやめてください!」というリクエストに応じて授業を早めに終えたため、私自身も家でこの試合の後半を見ることになった。
そして、偶然見ることになった本田選手のゴールには、今の企業における若者の状況について、とても多くのことを考えさせられた。
まず、本田選手は、1986年6月13日生まれだそうだから、試合の日は26歳である。そして、その26歳が日本中の期待を背負って、全国にテレビ中継されるなかで、大きな意味のある仕事を任される。26歳といえば、大卒ならば入社して3~4年である。本田選手の場合は、プロになったのが05年だとあるから、すでに8年ぐらいのプロキャリアがあり、大卒換算でいえば、30歳ぐらいか。もちろん、プロ入り前からサッカーはしていただろうから、もう少し長いかもしれない。でも、若いことには変わりはない。
私が考えてしまったのは、入社して8~10年目の若者に、そこまで大きな仕事を任せるということを、今の企業はどこまでやっているのだろうか、という点である。もちろん、本田選手の場合は、極めて優秀だということなのだろう。そして皆がそれをわかっている。でも、日本の企業は、たとえその人が極めて優秀だとわかっていても、社運をかけるような仕事を10年目の社員に任せているだろうか。