シェールガス革命の恩恵をなぜ受けられないのか
2013年の日本経済にとっての大きなリスク要因に、電力料金の値上げ問題がある。3.11後の原子力発電所の運転停止にともなう火力発電用燃料コストの急膨張によって、電力会社が料金引き上げを迫られた。
もう1つ強調しておきたい点は、このままでは大幅な電力料金の値上げが長期にわたって避けられないことである。総合資源エネルギー調査会基本問題委員会は、昨年、30年のわが国における原子力発電の依存度について、「ゼロシナリオ」「15%シナリオ」「20~25%シナリオ」「決定しないシナリオ」という4つの案をまとめた。あわせて基本問題委員会が発表したコスト等検証委員会の発電コストに関するデータにもとづく試算によれば、30年に電力料金は、10年度の水準と比べて、「原発ゼロシナリオ」では99~102%、「原発15%シナリオ」では71%、「原発20~25%シナリオ」では54~64%、それぞれ上昇することになる(「決定しないシナリオ」については試算が不可能)。このような料金水準の上昇が生じるのは、コスト等検証委員会がLNG価格を原油価格とリンクさせて計算し(いわゆる「油価リンク」)、その基になる原油価格が趨勢的に高騰すると見込んでいるためである。
大幅な電力料金の上昇は、国内製造業の競争力低下、ひいては生産縮小に直結する。それは、産業の国内基盤を根底的に脅かし、日本経済に甚大な打撃を及ぼすことになりかねない。
そのような状況を現出させないためには、「なぜ日本の天然ガスの価格は、アメリカの9倍も高いのか」(http://president.jp/articles/-/6730)で強調したように、アメリカで起きたシェールガス革命をふまえて天然ガスを安価に調達することが決定的に重要な意味をもつ。日本の会社がこれまでシェールガス由来のLNG(液化天然ガス)輸入に成功しなかった理由の一端は、まとめ買いをする能力に欠けていた点に求めることができる。この点で注目すべきは、韓国の場合、最近までKOGAS社1社が、電力会社(KEPCO社)や他のガス会社の分まで含めて、必要なLNGをまとめ買いしてきたことである。これに対して日本の場合には、電力会社やガス会社の足並みがそろわず、まとめ買いがなかなかうまく成立しない。シェールガス革命の成果をわが国が享受できない大きな理由の1つは、この点にあると言える。わが国の電力会社やガス会社は、シェールガス革命の本場であるアメリカのガス田やLNG基地に直接出かけ、力を合わせて効果的なまとめ買いを実行し、この国民的課題を達成する先頭に立たなければならない。また、日本政府は、そのような動きを支援するため、アメリカ政府を相手にした新しいタイプの「資源外交」を展開すべきである。