マンパワーも予算もないなかで成功させるには

デフレが続き、人口減少に向かう国内市場。眼前の景気は回復傾向にあるものの、中長期的には問題山積みである。変化を求める声が飛び交うが、日本の企業や地域が取り組まなければならないのは、閉塞的な状況のなかを堂々巡りする変化ではなく、新たな状況を拓く変化であるはずだ。今回は、この新たな状況を拓く道筋を考えていく。

藤原和博氏は、リクルートを経て、民間人校長をつとめた人物。リクルート時代には、営業担当として新しい市場を次々と切り拓いてきた。その著書『つなげる力』(文藝春秋)の冒頭のエピソードは、「新たな状況を拓くとは何をすることか」を考えるうえでの恰好の手がかりである。状況を拓くには、つなげることの戦略性が必要なのだ。

2000年代半ば、東京都内の公立中学校に校長として赴任した藤原氏は、無機質な校内が気になった。花の植えられていない花壇、手入れの行き届かない荒れ地のような場所……。

「しかし」と当時を振り返り、藤原氏は続ける。学校の環境整備をする用務主事はリストラで罷免されていた。立ち木の剪定予算も緊縮気味だ。忙しさが増す一方の先生たちにやらせるわけにもいかない。

皆さんが、同氏の立場だったら、どうするだろうか。

さて一方で当時、校庭の芝生化を進めていこうということで、区の教育委員会は新規の予算を計上していた。とはいえ既述のように、現場の学校は、日常の手入れの費用や人手の不足という悩みを抱えていた。芝生は特に手入れがたいへんである。先行して芝生化に取り組んだ学校の苦労を聞き、続いて手を挙げる学校が現れないという事態となっていた。

藤原氏はどうしたか。考えたうえで、同氏は、校庭の芝生化事業に手を挙げたのだ。