「右派市民」の階層的特徴の盲点

ただ、これまでの調査研究では十分に明らかになっていない点もあります。本書のように、極端な考え方を持っている少数の人々をとらえるには、それなりに大規模の調査データがなければいけません。人数が少ない場合、結果が不安定になり、はっきりした特徴をとらえきれないためです。その点、本書が用いているデータならば、ある程度まとまった形で右派市民をとらえることができます。本書が対象とする4タイプの右派市民がどのような階層的特徴を持つのか、少し掘り下げてみていきましょう。

松谷 満『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)
松谷 満『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)

階層的特徴を検討する際に注意しなければならないのは、性別や年齢といったほかの属性の影響です。たとえば、右派市民には大学卒よりも中学・高校卒の人が多いという結果が出たとしましょう。しかし、それは学歴自体によって違いが生じているのか、それとも高年層には大学卒の人が少ないことによるのか、はっきりしません。

職業も同様です。右派市民には無職者が多いという結果が出たとしましょう。しかし、それは無職か有職かという違いによるのか、それとも高年層には退職者が多いことによるのか、はっきりしません。したがって、性別や年齢という条件を一定にした場合に社会階層の違いがあるのかないのか、といったことを見極めないといけないのです。

もっとも右派から縁遠い社会層

その点に注意し、まず学歴の影響を確認しましょう。性別や年齢の影響を考慮するために、性別・年齢・学歴で12のカテゴリを作りました。年齢は若年(20~30代)、中年(40~50代)、高年(60~70代)とし、学歴は大卒(短大・大学卒以上)か非大卒(中学・高校卒)かという2区分にし、それに性別を加えると12の組み合わせとなります(*5)

こうすれば、「高年層に高学歴層が少ない」といった影響を除外した結果としてみることが可能です。図表3は、右派市民の4タイプにそれぞれのカテゴリの人たちがどの程度含まれているかを示しています(*6)

たとえば、愛国主義者には「若年大卒男性」が18%含まれていますが、調査回答者全体のうち若年大卒男性は14%のため、愛国主義者に相対的に多いことがわかります。一方、「若年大卒女性」は全体の10%を占めていますが、伝統主義者には1%しかいません。若年大卒女性は伝統主義者が目立って少ないといえます。

このようにして確認していくと、図表3は右派市民のプロフィールについて多くのことを教えてくれます。

まず、先に確認したとおり、右派市民は男性が中心で女性は少なめです。とくに若い大卒の女性が構成比からすると目立って少ないことがわかります。若年大卒女性はもっとも右派市民と縁遠い社会層だといえるでしょう。

そして、女性に関しては大卒よりも非大卒層(中学・高校卒の人々)のほうが右派市民と親和的です。あくまでも大卒女性と比べれば、ということです。

*1 第3章から第5章までの分析については、統計的な検定を行い、有意な関連、つまり統計的にみて明確だといえる特徴がみられた部分のみに限定して記述しています。検定に関する細かい記述は省いていますが、恣意的な基準によるものではないという点をご理解ください。
*2 三宅一郎『現代政治学叢書5 投票行動』東京大学出版会、1989年
*3 中井遼『欧州の排外主義とナショナリズム 調査から見る世論の本質』新泉社、2021年
*4 樋口直人『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版会、2014年。樋口直人ほか『ネット右翼とは何か』青弓社ライブラリー、2019年
*5 このカテゴリの作り方は、吉川徹『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』(光文社新書、2018年)を参考にしました。
*6 表中の太字は全体の傾向と比較して割合が多いと認められるカテゴリ、グレーは少ないと認められるカテゴリを示しています。いずれも統計的な基準によって判断しています。なお、これ以降の図表でも同様の基準を用いた表示を行っています。

 

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