沖縄の離島・多良間島は1日2往復の航空路線が連日満席で、島民が飛行機に乗れない異常事態が続いている。原因は「マイル修行僧」が殺到したことだ。なぜ人口1000人のこの島だけが予約困難になったのか。フリーライターの宮武和多哉さんが、背景と離島が抱えるジレンマを取材した――。
多良間空港に着陸後、乗客はターミナルに徒歩移動する
筆者撮影
多良間空港に着陸後、乗客はターミナルに徒歩移動する

1000人の命綱が満席地獄に

お隣の宮古島まで約60Km、飛行機が移動の頼みの綱なのに、ずっと「満席・キャンセル待ち」のままで、予約がとれる気配がない。そんな事態が、沖縄の離島・多良間島で起きている。

原因は、JAL系列への搭乗で得られる「ライフステータスポイント(以下:LSP)」を目当てにする、俗に言う「マイル修行僧」だ。このポイントが2倍獲得できる「ダブルLife Statusポイントキャンペーン」を昨年11月から開催したところ、片道25分という短距離でポイントが得られる多良間空港発着の航路に予約が集中。軒並み満席が続くという状況が続くようになってしまったのだ。

人口1000人強の多良間島は、東京なら港区と同様くらいの広さしかなく、島内には高校も総合病院もない。何をするにも宮古島に出る必要があるこの島にとって、「琉球エアーコミューター」(JAL系列。以下「RAC」)が運航する1日2往復の航空路線は、命綱に等しい。その飛行機が予約満杯で乗れないとあって、多良間島民の不満は爆発した。

RACも増便を行ったものの足りる訳もなく、最終的には島の要望にこたえる形で、多良間航路だけがポイント2倍キャンペーンの対象外となり、予約客向けにも手数料無料で払い戻しを求める事態になっている。

RACはこの島に限らず、沖縄の離島に10航路もの路線を運航しており、多良間島はもとより「マイル修行僧の聖地」でもあった。にもかかわらず、なぜ今になってこのような事態が発生したのか? 実際に多良間島を訪れ、騒動の顛末を検証する。

制度改定が生んだ「修行僧」

多良間島への航路だけに、いま予約が集中したのはなぜか? 背景には、JAL会員のなかでも上級ステータスに位置づけられる「JALグローバルクラブ会員」の入会条件が、2年前に変更されたことにある。

それ以前にあった基準(JMBサファイア以上)は「1年間の搭乗回数が50回+FLY ONポイントが1万5000ポイント」などで入会可能だったため、頑張れば初年度から容易に入会できた。しかし、規約改定とともに新制度「LSP(ライフステータスポイント)」が設けられ、入会条件は「積算でLSP1500ポイント獲得」に変更になったのだ。

LSPを5ポイントを貯める選択肢は「JALか系列会社の航路に1回搭乗」「JALカードで2000マイル獲得」。これが1500ポイントとなると、よほどの資金力と余暇がない限り、グローバルクラブ会員の権利を目指せない制度に変わってしまった。

【図表1】JALグローバルクラブ会員の入会条件
制度変更により、入会の難易度が上がった(JALホームページを参考に、プレジデントオンライン編集部がGeminiで作成)

いわば「一挙に貯めるポイント制から、コツコツ貯めるライフステージ制へ」といった制度の激変があったために、JAL利用者は軒並み戸惑っているのだ。

2026年時点では制度変更から2年少々しか経っておらず、多くの人々が必死に入会を目指している。「ラウンジ利用無制限」「優先搭乗」などの特典が段違いに増加するグローバルクラブに一刻も早く入会したい人々は、JALカードに公共料金や通勤定期の支払いをまとめてマイルを獲得しつつ、隙あらば旅行に出かけて「LSP5ポイント」獲得をコツコツと目指している。

【図表2】JALグローバルクラブの会員特典
筆者作成
サクララウンジを利用できるのが大きい

この状態で11月からLSPポイントの2倍アップキャンペーンが開催され、運賃が大幅割引になる「JALunLun BLACK FLYDAY」(2025年11月)、「JALunLun 新春セール」(1月)も重なり、マイル修行僧は次々と飛びついた。

各地の航空路線はこうして、観光地にも行かずに「LSP1500ポイント」を目指して搭乗を繰り返す人々で溢れてしまったのだ。