会計の知識によって会社を変える
私は役員を務める金属加工メーカー・松本興産を「会計の知識習得」をフックにして変化・成長を後押ししてきた実績があり、さまざまな企業に講演や研修を通してその経験をお伝えしています。こうした活動をしていると、大手企業や中小企業の皆様から「若手社員が受け身で困っている」「指示は守るが、自分の意見を言わない社員が増えている」といった悩みを拝聴することも多いです。
そこで、これまで関わった大手企業や中小企業がその悩みをどのように解決してきたのかをご紹介します。
大手情報機器メーカー「やる気はあるのに…」
最初に紹介するのは、国内外に複数の拠点を持つ大手情報機器メーカーの事例です。同社は長年にわたり安定した事業基盤を築き、売上・利益ともに一定水準を維持している企業でした。
一方で、社内では次のような課題感が共有されていました。
・ 若手社員が会議や研修であまり発言しない
・ 業務実績や売上などの話は一部の管理職や専門部署だけのものになっている
・ 業務に関する改善提案は出るが、全体最適につながっているのか分かりにくい
私に研修を依頼した中堅社員は、「若手社員にやる気がないわけではないんです。ただ、会社全体の構造が見えていないため、自分の仕事と経営の判断が結びついていないのではないでしょうか」とおっしゃっていました。
こうした背景から、「決算書を読める人を増やす」という目的で、若手社員向けに「会計研修」を実施しました。
研修ではまず、企業の財産(資産・負債・純資産)のバランスを示す「貸借対照表(BS)」と、一定期間の経営成績(収益・費用・利益)を示す「損益計算書(PL)」に関して初歩から解説しました。そして、在庫や設備、現預金といった資産が、どこに、どのような形で存在しているのか、専門用語を使わずに整理していきます。
「自社の決算書を見ましょう」で起きた変化
研修の前半では、若手社員は比較的静かに説明を聞いていました。大きな反応はなく、メモを取る人がいる程度です。空気が変わったのは、私が次のように声をかけた場面でした。
「では次に、実際に御社の決算書を見ながら、分析していきましょう」
この一言をきっかけに、若手社員の行動に変化が見られました。背もたれにもたれていた姿勢が前傾になり、資料をめくり、数字を確認し始めます。電卓を取り出す社員も現れました。
研修開始から約30分後のことでした。

