「β版の定義もわかっていないのか」と腹を立ててしまえば、結局は相手の不信感を高めるばかりで物事は前に進みません。自分が信用されていないと感じればパートナーのプライドも傷つきますし、次第にコミュニケーションも断絶されるという悪循環につながります。

一方、いま目の前にある問題=「こと」に集中できる人は、同じ問題をプラスに変えられる力を持っています。

なぜ誤解が生じたのかと相手の立場になって考え、さらには相手から自分たちの姿がどう見えているかを想像する。そのうえで「ではβ版を今から完成させるためにはどうしたらいいか」をパートナーとともに考えていく。そうやって課題を乗り越えることは、新たな信頼関係を築くことにもなるでしょう。

海外で働く人材というと、語学力や国際的なバックグラウンドが重要とされがちです。しかし実際の現場で求められるのは、馴染みのない文化や新しい環境に対する謙虚さなのです。海外展開の話に限らず、DeNAという会社が今、成功を収めている理由も、そのような人材に恵まれてきたからだと私は思っています。

質のいい非常識さを持ち、誰かを批判するのではなく課題に集中している人を見ると、私はとても清々しい気持ちになります。そして、そんな姿勢を持つ人がチームの中に1人でもいればこそ、ひとつの目的を必ず達成するんだという雰囲気も高まってもいくのです。

DeNA創業者 南場智子
1962年、新潟県生まれ。新潟高校、津田塾大学卒業後、マッキンゼーに入社。ハーバード大学でMBA取得後、同社パートナー(役員)に就任。99年、ディー・エヌ・エー設立、代表取締役社長に就任。11年、社長退任。
(稲泉 連=構成 市来朋久=撮影)
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