中途社員はメガバンク、電機、自動車出身者
京都企業の先輩である京セラは日本電産より14年早く創業した。その京セラで会長以下の経営幹部がすべてプロパーになったのが数年前。一方、日本電産のプロパー社員は30代以下の若手である。幹部級の人材が育つには、あと10年ほどかかるということになる。
そのため、日本電産は中途の人材を積極的に採用している。事務系ならメガバンクや地方銀行出身者が多く、元支店長クラスだけでも現在70~80人が活躍中だ。技術畑では総合電機のトップメーカーから26人、重機・造船の最大手から35人、自動車大手から40人など、相当数の人に来てもらっている。
中途採用ではどんな人に来てほしいのか、と聞かれることがある。ここではまず「いらない人」の条件をあげてみよう。
確実にいえるのが「マネーファーストはダメ」ということだ。つまり仕事の中身よりも先に、報酬や休暇の交渉から入る人。外資系企業から来る人はほとんどがこれに当たる。仕事に打ち込み自己実現をし、その後に報酬がついてくる。これが日本社会の常識である。常識を共有できない人とは一緒に働くのが難しい。
単純に報酬の額だけをいうなら、外国企業のほうが好待遇の場合がある。最近採用したエンジニアに聞くと、その人は韓国企業から日本電産の3~4倍の年収を提示されたという。
では、その人はなぜ日本電産に入社したのか。わけを聞くと「日本の技術を海外に流出させるわけにはいかないと思った」というのである。
あるいは、ドイツ企業に勤めていたが最近になって日本電産へ転じた人がいる。この人は当社へ来たことで年収が半減した。彼も立派な考えの持ち主である。
「ドイツの経営者はドイツのことしか考えていない。たしかに金銭面で不自由はしなかったが、それだけでは自分自身に悔いが残る。最後は日本の国に尽くしたかった」というのだ。