となると、ブラジルには現地にポルトガル語のほかスペイン語のできる人材を投入しなければならない。まずはスペイン子会社から人を出してもらい、徐々に現地スタッフを充実させる計画だ。

私の経営者としてのあり方も変えなければならない。戦線が拡大すれば、これまでのように自分1人で全地域を掌握することは不可能となる。グローバル全体のしっかりしたシステムを組み上げ、それに従い、経営を進めていくしかないのである。

その第一歩となるのが、アメリカ子会社の日本電産モータに南北アメリカのグループ経営を任せることだ。ここにアメリカ人の優秀なCEOを置き、現地の事業を統括してもらう。土地感のない日本人を派遣するより、そのほうが理にかなっていると思うからだ。

では、将来の日本電産の社長はどういうところから出てくるのか。別に日本人である必要はない。仮に今後、アメリカ市場が最大の利益を生むとしたら、そこを統括している人がグローバルのトップに立つこともありえるだろう。

あるいは、現在の稼ぎ頭はパソコン向けハードディスク事業だが、このままいけば自動車向けが中核事業に育つだろう。すると、ハードディスクではなく自動車事業から社長を出すのが自然ということになるかもしれない。

役職者を肩書で呼ぶ習慣を順次見直していこうと考えている。まずは外国人と接する機会の多い部署から変えていく。外国人の上司が赴任してきたら「ブラウン部長」ではなく「ミスター・ブラウン」と呼ぶはずだ。だから日本人同士でも「田中部長」はやめて「田中さん」に統一しようということである。外資系企業のように降格人事も一般化する可能性がある。そのときにもスムーズに受け入れられる素地をつくりたい。

小さなことかもしれないが、社員の意識を変えていくには重要なことだと思っている。

日本電産社長 永守重信
1944年、京都府生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)卒業。73年に日本電産を創業し、現在に至る。
(面澤淳市=構成 芳地博之=撮影)
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