中国人、韓国人に学ぶ仕事への情熱

オリックス社長 
井上 亮氏

海外畑が長いため、これまで多くの外国人と一緒に仕事をしてきました。その経験からいえるのは、最近の日本人はハングリーさやチャレンジ精神に欠けているということです。

私が入社した36年前と今を比べると、オリックスは大きく成長し、優秀な日本の若者が多く集まるようになりました。ただ、私が若かったころにあった熱気のようなものがなかなか感じられません。これを大企業病というのかもしれませんが、リスクを取らず、些細なことでも上司の意見を聞かないと行動できなくなっているような気がします。

他方、元気があるのは韓国人や中国人の社員たちです。

オリックスの海外事業を担うグローバル事業本部では、韓国事業チームと中国事業チームをそれぞれの国の人たちだけで構成しています。韓国事業チームには9人の韓国人が所属していますが、それはもう賑やかです。

彼らは韓国語でワアワアと、喧々諤々の議論をします。ひどいときには机を叩いてお互いが納得するまで熱く話し合っています。私と彼らでいい合いになることも少なくありません。しかし、そうやって議論することによって新しいアイデアや案件が生まれ、商売につながっているのです。

韓国事業チームの隣に中国事業チームがあり、6人の中国人で構成されています。こちらはこちらで、中国語が飛び交いとても賑やかです。

ところが、その隣の日本人チームからはあまり声が聞こえてきません。韓国人や中国人と比べて理知的に仕事を進めているといえば聞こえはいいですが、私から見るとおとなしすぎて物足りません。

韓国人と中国人のハングリーさは、稟議書ひとつとってもわかります。彼らの作る稟議書はハートフルで、訴えたいことがひしひしと伝わってくるのです。なぜその仕事をしたいのか、その仕事にはどんなリスクがあって、それをクリアするためにどんな方法があるのかなどが、これでもかというぐらい書かれている。

それに比べ、日本人の書く稟議書は3分の1程度しか伝わってくるものがありません。要点はよくまとまっているかもしれませんが、もっと熱く訴えてくるものがあってもいいのではないかと思います。

だから私は日本人の社員に向かって「君たち、このままだったらそのうちポジションがなくなるぞ」と冗談半分で脅しているのです。

私はよく、国際経験が豊かだといわれますが、実は入社当初、まったく英語を話せませんでした。それなのに最初に配属されたのは国際部東京営業課。周りには英語に堪能な先輩たちがいて、部長からは「英語が話せない君が、なぜ国際部に来たんだ」と嫌みをいわれた。むしろ私のほうが知りたかったですよ(笑)。

あるとき、香港駐在の先輩の奥さまが病気になり、急遽、帰国しなければならなくなりました。そこで私が代わりに香港へ行くことになり、ブロークンイングリッシュで奮闘することになります。英語が話せるようになったのはそれからで、何事もチャレンジが大事。度胸と恥をかくことを気にしなければ英語に限らず外国語は身につきます。