考える力、判断力を持つ人材は仕事からも学ぶ

オリックスが求める人材は、自分で「考える力」を持っている人です。仕事をしていくなかで、わからない言葉や用語が出てくると思います。特に若いころはいろいろと覚えなければならないことが多いものです。

例えば、金融用語で「L/C(Letter of Credit=信用状)」という言葉があります。貿易決済を円滑化するための手段として、銀行が発行する支払い確約書のことです。私が初めてこの言葉を耳にしたとき、すぐに書店へ行き、L/Cについて書かれた本を買って勉強しました。それでもよくわからなかったので、知り合いがいる銀行を訪ね、L/C担当の人をつかまえて詳しく教えてもらったことがあります。

最近の若い人は、こういう地味な作業をしなくなりました。わからないことをわからないままで済ましてしまう。だから、1つの案件を担当しても、表面だけを見て、深く考えずに進めてしまう。運よく案件を成立させたとしても、知識やノウハウが蓄えられないので、次に同じような案件を任されたときにうまく対応できないのです。

1つの仕事には、知識とノウハウを得られる要素がたくさん詰まっています。100の要素のうち、半分の50でもいいから知識とノウハウを蓄える仕事のやり方ができなければ、会社としても欲しい人材とはいえません。

また、「判断力」も重要です。案件を成立させていく仕事のなかで培った判断力は、必ず次の仕事に生きてきます。

自分で考える力と判断力を備えている人であれば、極端な話、性格はどうでもいい。常識の範囲内でガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令順守)を維持できて、チームの和を乱さない限り、性格の善し悪しは関係ありません。

こういうと、欧米流のドライな経営者のように思われるかもしれませんが、私は社員とお酒を飲みながら話をするのが好きな、ウエットな経営者だと思っています。

日本人の社員ともよく議論をします。前言を翻すようですが、アグレッシブに仕事に取り組んでいる優秀な日本人社員もたくさんいます。そういう人たちを適材適所に配置してチャンスを与えることが大切です。社員1人ひとりが会社で輝けるようにするのが、社長である私の重要な仕事の1つだと考えています。

※すべて雑誌掲載当時

オリックス社長 井上 亮
1952年、東京都出身。中央大学付属高校、中央大学法学部卒。75年オリエント・リース(現オリックス)入社。2005年執行役、06年常務執行役などを経て、11年取締役兼代表執行役社長・グループCOO就任。
(百瀬 崇=構成 尾崎三朗=撮影)
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