こうした見方は少し大胆かもしれないが、過去の技術革新を振り返ってみれば驚くほどのことではないと思う。たとえばフィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったときは、大手フィルムメーカーが10年かかると予測した変化が3年で起きた。ブラウン管テレビから薄型テレビへの移行も同様で、実際には業界予測の3倍速で変化が進んだ。

業界予測が「10年後に10%」だとしたら、実際には30%になってもおかしくはない。普及の鍵はバッテリーの価格だといわれるが、商業ベースに乗ってからの技術革新は思ったより速いのが通例だ。早めにブレークスルーが起きるのではないか。

そうなると、守勢に立たされるのが自動車王国・日本である。日本の自動車大手は屋台骨であるガソリンエンジンを見切ることができず、ハイブリッド技術で延命を図っている。

だが、ガソリン車づくりの伝統を持たない中国は、国家プロジェクトとしてEVに全力を注いでいる。EVの時代に世界一の自動車メーカーを輩出するのは、日本ではなく中国である。中国メーカーなどが先導し、EVの普及は一気に進むだろう。

したがって日本電産は今後、自動車向けの事業を拡大する。次は鉄道だ。そして船舶、飛行機向けのモーターを順番に強化していくつもりである。

もちろん拡大の手段はM&Aだ。われわれが力をつければ、それだけ大きな相手を買収できる。また、海外、とりわけアメリカ企業を相手にする場合、これまでとは違って敵対的買収をためらわなくてもいいという利点がある。彼らにとっては当たり前のやり方だからである。

将来の社長は、日本人である必要はない

日本電産はいま、真のグローバル企業として大きな飛躍を遂げようとしている。売上高も間もなく1兆円を超え、それにつれて組織も巨大化する。

中国、インドに続き、ブラジルにも大型の生産拠点を設けるが、それは製品の需要が大きい成長市場にあるからだ。ブラジルは南米の拠点という位置づけで、ここを中心に周辺諸国をフォローする。