連日のように報じられるクマの出没。被害者数は過去最悪を更新した。市街地にまでクマが現れる異常事態に、政府は自衛隊の派遣を実施。ただ、社会学者の西田亮介氏は「政権浮揚にクマ問題を利用している」と言う。根本的な解決策は存在するのか。西田・安田両氏が語り合う――。
北海道知床半島の道路を横断するヒグマ
写真=iStock.com/Satoru S
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月1000頭ペースで捕獲しても被害が多発

【西田】2025年は本当にクマ問題が深刻でしたね。

【安田】「クマは山の中の話」ではなくなった、という年でした。つい先日もオンライン会議で研究者仲間と打ち合わせをしていたのですが、その中に東北大の先生がいたんです。彼も「東北ではクマの出没が日常になっている」と言っていました。ワイドショーのトップが必ず「今日のクマ被害」「目撃情報」から始まると。

【西田】盛岡では銀行の地下にクマが出ましたし、最近も群馬県の沼田駅前のトイレで被害が出たというニュースがありました。それこそ学校や幼稚園といった街の象徴的な場所にも現れている。クマの出没が日常の風景になってしまっています。

【安田】自分の家の周りに出なくても、「この前立ち寄った場所に出た」とか、「親戚が実際に目撃した」とか、仙台のような都会ですらそういう話が珍しくなくなっている。大学では、半円形の美しい図書館があることでも有名な秋田の国際教養大にも、キャンパス付近でクマの目撃情報が出ています。

【西田】怖いですね。そうなると、僕らのような大学教員にもクマ被害は無関係ではない。『プレジデントオンライン』などのウェブメディアを見ていても、クマ被害を取り上げた記事が連日のように掲載されています。で、実際の数字を見ると、より深刻さが増します。過去最悪だった23年度の被害人数は219人、25年は10月末時点ですでに196人(対談は25年11月12日に実施。11月末に被害人数は230人に達した)。この数年のトレンドとしてもクマ被害が増えているように見えます。

【図表1】クマ被害は被害人数、死亡者人数ともに過去最悪を記録

【安田】目撃件数は2万件を超えていて、この10年ほどのグラフを見ると、明らかな増加トレンドがうかがえます。私が驚いたのは、25年の上半期の4〜9月だけで、捕獲されたクマが6000頭を超えているというんですよ。

【西田】6000頭も!

【安田】「猟友会の人手が足りない」「駆除が追いつかない」と言われている中で、月1000頭ペースで捕獲していることに驚きました。それでも全然追いつかないというレベルなわけですから、どれだけ増えているのか、と。

【西田】なるほど。ミクロ経済学の研究者は何でも分析対象にしてしまいますが、安田さん、クマ問題についても、経済学的な分析はできるんですか。「クマの経済学」みたいな。

【安田】うーん……。経済学と言えるかはわからないですが、調べていて興味深いと思ったのがシカとの関係でしょうか。