「国産AI」にイマイチ期待できない歴史的背景
【安田】最近のAIの進歩には目覚ましいものがあります。大学など教育の現場でもちょっと前までは「使うか、使わないか」が議論されていたものですが、いまではすっかり「どう使うか」が問われるようになりました。実際のところ、西田さんは仕事にどれくらいAIを活用していますか?
【西田】いやあ、もうAIに頼らないと生きていけないレベルですよ(笑)。研究や文章執筆、調べ物まで、かなり使っています。GeminiとClaudeには課金していますし、調べ物にはPerplexityをよく使います。さらにXに統合されているGrokも、世の中の動向や炎上しているトピックの背景を摑むには便利ですよね。同じ質問を複数のAIに投げかけ、回答を比較しながら思考を深める、というのがすっかり日常になっていますよ。安田さんも研究にかなり活用しているのでは?
【安田】実は正直に言うと、私はあんまり使っていないんですよ。せいぜいChatGPTを論文執筆の補助や英文校正に利用する程度です。あ、ただ最近、ある研究テーマを思いついたときに「すでにこの観点での研究はあるか」と尋ねてみたことはあります。これまでは存在しない論文をさもあるかのように紹介してくるハルシネーションが問題になっていましたが、最近のAIは既存の論文であれば相当正確にリストアップしてくれるようになっていて、驚かされましたね。
【西田】AIは拡張された自分の知性になりつつありますよね。とはいえ、だからこそ、使えば使うほど「人間にしかできないことは何か」「人間の優位性とは何か」を考えています。
【安田】本当にそうですね。
【西田】今回はこの「AI」についてお話ししたいのですが、安田さんは気になっているトピックがありますか。
【安田】はい。最近、ちょっと気になっているのは「デジタル赤字」について。三菱総合研究所が2024年の日本のデジタル関連収支をまとめています。日本が海外のITサービスに支払っているお金は6.7兆円にのぼり、インバウンドで得ている5.9兆円の黒字を上回っている。こうした結果に「外国人観光客がどれだけ来ても、それ以上に海外プラットフォームにお金が流出している」という声もあがっているようです。ただ、経済学的に見ると、この「赤字」という表現には注意が必要だといつも思うんですよ。
【西田】注意が必要、というのは?
【安田】赤字というと、どうしても「良くないもの」「解消すべきもの」というイメージで語られがちです。しかし、経済学の視点からすると、貿易収支や経常収支の特定の分野に赤字があること自体は、必ずしも悪いことではありません。例えば、トランプ米大統領が関税を持ち出したときにも、同じような議論がありました。米国の赤字を減らすために輸入品に高関税を課したけれど、それは世界的にむしろ非効率をもたらした。赤字イコール悪という発想自体が重商主義的で、現代の国際経済にはそぐわないんですよ。
【西田】「赤字」を強調する言説には、政治的な含意も感じますよね。国民に危機感を持たせて、政策の必要性や予算を確保する方便として使われているところがあるじゃないですか。
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