テレビ局が堅調さを取り戻しつつある。2013年3月期の在京キー局5社の営業利益合計は1000億円強。リーマンショック直後の09年3月期から約2倍にまで回復した。

各社の売り上げの大部分を占めるのは広告収入だ。だが、リーマンショック以降、企業の広告出稿量が減少。さらに、ブロードバンドの普及により、テレビ番組全体の視聴率が漸減しているため、広告単価も下がる傾向にある。

状況を打開すべく、各社は多角化に取り組んできた。08年に赤坂サカスを開業したTBS、今秋に新社屋の完成を控えるテレビ朝日、麹町旧本社跡の再開発を計画中の日本テレビなど、精力的に不動産開発を進めている。また、フジテレビによるセシールの買収など、ショッピング事業への進出も目立つ。

多角化と並行し、各社は固定費削減にも力を入れてきた。大物タレントではなく若手芸人を起用するなど、特に制作費をカットする傾向が続いている。

こうした取り組みが奏功し、広告収入も改善しつつある。もっとも好調なのが日テレだ。制作費がかさむドラマの本数やバラエティに登場する芸人の数を減らすなど、細かい改善を積み重ねてきた。創意工夫で制作費を削減しながらも、視聴率を高め、広告収入を上げるという好循環をつくり出した。

目下、年間視聴率トップの座を日テレと争っているのがテレビ朝日である。ゴールデンタイム(19~22時)は1番組1時間というこれまでの常識に対し、同社は2~3時間の番組を展開。制作費を抑えると同時に、複数の人気番組を組み合わせて放送するなど、新しい番組づくりを模索してきた。

一方、TBSは苦戦が続いている。ドラマ「半沢直樹」のヒットで8月の平均視聴率はフジを上回り3位となったが、それ以外の番組がふるわない。

もっとも、中長期的に見ると安穏としていられないのは各社共通。ニコニコ動画やBeeTVなど、新しい動画メディアが急成長している。オリンピックの東京開催は、テレビ局にとって追い風ではある。だが7年後、はたして私たちはオリンピックを居間のテレビで家族とともに見ているだろうか。タブレットやスマートフォンなど、多様なデバイスに対応した新しい視聴体験の創出に期待したい。

(構成=プレジデント編集部)
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