まじめに働いても日本の経済が良くならないのはなぜか。ブランドビジネス・コンサルタントの高橋克典さんは「日本人は勤勉なイメージがあるが、一人当たり名目GDPランキングではフランスに負けている。フランス人の多くはすぐに仕事を引退したいと考えるほど怠け者だが、そこに生産性を高めるヒントがある」という――。

※本稿は、高橋克典 『高く売るフランス人 安く売る日本人 フランス流「休むことが利益を上げる」仕組み』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。

日本とフランス国旗
写真=iStock.com/Oleksii Liskonih
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商売する気がないパリの街

真偽のほどはわかりませんが、皇帝ナポレオン・ボナパルト(1804年即位)は即位した翌年、イギリス上陸を目指してドーバー海峡沿いのブローニュに赴いた際、「向こう側は商人の住む島だな」と語ったといいます。今でもフランス人の中には、商業活動を少し見下すような人が少なくありません。

一般庶民であっても、できることならなるべく早く商売から離れ、自由気ままに暮らしたいと願っている節があります。私が初めてパリを訪れたのは、ほぼ半世紀前の1975年7月のこと。絵画が好きだったので、美術館はもちろん、無料で入れる画廊巡りも楽しみにしていました。ところが、どこもシャッターが下りているのです。

さらに、サンジェルマン・デ・プレのブランドショップも「ヴァカンス中につき、8月26日まで閉店」の貼り紙。花の都の人々は、まるで商売をする気がないようで、その衝撃は今でも鮮明に覚えています。

よく見ると、街を歩くのはカメラを下げた外国人ばかり。パリジャンやパリジェンヌは大都会を離れてしまっていたのです。その暮らしぶりが、どこかうらやましく感じられました。