※本稿は、アダム・グラント(著)、楠木建(監訳)『HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学――あなたの限界は、まだ先にある』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
友人の歯についた「食べかす」を指摘する方法
「お前はこの場にふさわしくない」
大きくはっきりした声が私の頭の中で響いた。吹き出す汗でシャツが湿り、緊張で胸がざわめく。壇上に立つことは、大の苦手だった。
恥ずかしがり屋で内向的だった私は、子どもの頃、授業中に手を挙げるだけでも緊張した。発信者番号通知機能がまだなかった時代には、かかってきた電話に出る時でさえ声が上ずる始末だった。
大学院時代、私は人前で話すことへの恐怖を早いうちに克服しようと自分に誓った。比較的無難な曝露療法を段階的に試していく時間の余裕がなかった。
そこで、フラッディング法を用いて、最初からあえて恐怖に向き合うことにし、友人たちが履修する学部課程の授業で、無償のゲスト講師として講義を行なうことを申し出た。
学ぶためには、友人たちからの有益な助言が不可欠だと考えたからだ。だが、講義後に彼らにフィードバックを求めても、「興味深い内容だった」「熱意が感じられた」といった漠然とした褒め言葉しか得られなかった。
他者に対して意見を持つ場合、それが相手にとって有益であっても、人は往々にして口をつぐんでしまう。例えば、友人の歯に食べかすがついているのに気づいても、それを本人に伝えることに躊躇する。
私たちは、礼儀正しさと親切とを混同しがちだ。礼儀正しさとは、相手が今この時を気分よく過ごせるように、自分の意見や感想を控えることである。対して、親切とは、相手が将来、よりよくなるために、率直な意見を伝えることだ。
伝え方に配慮する必要はあるが、率直に意見を述べることは可能である。「君に恥ずかしい思いをさせたくないが、知らないでいるほうが恥ずかしいことだと思うから、あえて言わせてもらうよ。君の歯茎からブロッコリーが見え隠れしてるんだ」というふうに。

