「読書は質が大事」「しっかり読み切るべき」。そう考えて読書を始めることすらできていないのではないだろうか? 本を読むハードルがぐっと下がる、勝間流・本との向き合い方と読書が生み出す最大のメリットとは。

読書は「好き」ではなく昔から生活リズムの一部

私は小さな頃から、家にある本をひたすら読んでしまう子どもだったんです。自分の部屋がなかったので、親の寝室を遊び場にしていたのですが、そこに並んでいた百科事典や絵本、世界文学全集、大人向けの「お悩み相談」みたいな本まで、文字の読み方もあやふやな頃から片っ端から開いては読んでいました。それから、8歳年上の兄が好きな『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』など、手塚治虫の漫画がたくさんあったのも良かったですね。

勝間 和代
勝間 和代(かつま・かずよ)
1968年、東京都生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA、慶應義塾大学商学部卒業。経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授。著書に『勝間式 金持ちになる読書法』(宝島社)、『仕事と人生を変える 勝間家電』(ダイヤモンド社)など。

親から「本を読みなさい」と言われたことは一度もありません。周囲に本がとにかくたくさんあったので、ただ「あるから読んでいた」という感覚。それが私にとっての読書の原点です。これまで本当にたくさんの本を読んできましたが、当時から「読書が好きだった」というよりは、「読むことが生活のリズムの一部になっていた」というほうが正確かもしれません。

20代後半に外資系の金融機関に勤めていた頃に出合った『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)は、そんな私の人生に大きな影響を与えた一冊です。キャリアにおける激しい競争の中で、数字と人間関係の板挟みに悩むことも多かった当時の私にとって、「主体的である」「目的を持って始める」といったコヴィーさんの言葉はまさに救いのように心に響きました。

なかでも「インサイド・アウト」という考え方は、私の行動の基本になったといえます。周囲を取り巻く状況を変えようとするのではなく、自分の受け止め方を変えるということ。そうすれば世界の見え方そのものが変わっていく――この考え方は今も大事なものとして自分の中で生き続けています。

私はこの本を読んだとき、重要な部分をノートに書き写して机の横に張り、出社前に眺めることを日課にしていました。そうやって心の持ちようを整え、「仕事が大変」「上司が厳しい」と感じていたことを、「自分がどう向き合うかという問題」として考える癖をつけた。その小さな意識の変化が、後の行動のすべてを変えたと言っても過言ではありません。

この本のすごいところは、宗教や哲学を超えて実践的な成功法則を与えてくるところにあります。モラルを押しつけるわけではなく、誰にでも理解できる言葉で「どう生きるか」の道筋を示してくれる。そして、単に読んで終わりではなく、日常の行動にすぐ落とし込めるように内容が設計されています。今でもこの一冊を超えるビジネス書にはなかなか出合いませんね。

20代後半で読んだ『7つの習慣』は人生で最も影響を受けた一冊。
20代後半で読んだ『7つの習慣』は人生で最も影響を受けた一冊。

ただ、「本」が情報を得るうえで大きな比重を占めていた当時と比べ、インターネットに情報がいくらでもあふれている今は、私も以前のようには本を読まなくなりました。

ネットもYouTube(ユーチューブ)もなかった時代には、それこそ情報の9割近くを本から得ていたものです。

例えば、何かを知りたいと思ったら、まずは書店に行って棚を眺める。目に留まった本を手に取って、ページをめくる。それが知識を得るための当たり前の行動で、今思えば、あの頃のそうした書店での情報探索は、今でいうネットサーフィンと同じようなものでした。書店という海を泳ぎながら、自分の知らない世界を拾い集める感覚だったわけです。

でも、なぜそうしていたかといえば、その理由は単に知識を得るには本を読むしかなかったから。今は書店に行かなくてもネットで検索すれば、知りたい情報が何でも出てくる時代です。ユーチューブを開けば専門家の解説もすぐに聞けるし、ブログやnoteで一つのテーマを深掘りした記事を、次々と読んでいくことも容易にできます。情報を得る経路が多様化したため、「本」はすっかり特別な存在ではなくなりました。

(構成=稲泉 連)