高齢者が最善の医療を受けるにはどうしたらいいか。医師の石川英昭さんは「特に高齢者は、身体的特性や病状の複雑さが考慮されていない場合も多く、ガイドライン通りの医療が必ずしも最適な選択肢とは限らない。また医師に診察を受けると、『様子を見ましょう』と言われることがあるが、これも重要な判断の一つだ」という――。

※本稿は、石川英昭『幸せな老衰 医師が伝える叶えるための「3つの力」』(光文社)の一部を再編集したものです。

慰め、励ます医者
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EBMが自分に合うとは限らない

「EBM:Evidence-based Medicine(根拠に基づく医療)」とは、「科学的な研究結果に裏打ちされた治療法」を意味します。これまでの研究や臨床試験の結果に基づいて、患者さんに最適な治療法を提供するための考え方です。

またEBMの実践には、「診療ガイドライン」の存在が欠かせません。これは、学術団体などが定めた、現在最も信頼されている治療法や診断法に関する指針です。患者さん一人ひとりに対して、科学的に証明された医療を提供することを目指しています。

しかし、ここで大事なのは、「診療ガイドライン」はあくまで、「推奨」される治療法に過ぎないということです。つまり、ある治療法が、すべての患者さんにとって最適とは限らないのです。

特に高齢者においては、その身体的特性や病状の複雑さが考慮されていない場合も多く、ガイドライン通りの医療が必ずしも最適な選択肢とは限りません。

また、高齢者の場合には、治療に対する反応も違ってきます。たとえば、がんの治療においても、若い人であれば積極的な治療が推奨される場合でも、高齢者の場合には、その治療が体力的・精神的に耐えられるものなのかを慎重に考える必要があります。

つまり、高齢期の医療では、治療にかかる時間や費用、「生活の質」や「現在の暮らしを保つこと」も含めて、自分に合った医療を選ぶことになるのです。