一つのことに集中する「シングルタスク」と、同時並行で複数のことを行う「マルチタスク」、どちらがより効率的か。ビジネスコンサルタントのマーク・ザオ・サンダーズ氏は「一般的にはシングルタスクのほうが生産性が高いと言われているが、課題の組み合わせによってはマルチタスクのほうが効率的に進むこともある」という――。
※本稿は、マーク・ザオ・サンダーズ著、池村千秋訳『世界のエリートが実践している超生産的時間術 「タイムボクシング」で時間あたりの成果を倍増させる』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
「マルチタスク」は本当にダメなのか
ほとんどの人は、マルチタスクを実行している。一見すると、そうした行動は、タイムボクシングとぶつかり合うものに感じられるかもしれない。タイムボクシングは、一度にひとつのことだけに取り組むアプローチだからだ。しかし、本当に両者は対立する関係にあるのだろうか。
そもそも、マルチタスクとは、どのようなものなのか。この言葉は、いくつかのことを同時並行でおこなおうとすることを意味する。少ない時間でより多くの成果を挙げるために、自分の集中力を複数の課題に振りわけようとするのだ(マルチタスクは、コンピュータの世界で生まれた考え方だ。昔のコンピュータは、一度にひとつのことしかできなかったのである)。
マルチタスクには、悪いイメージがついて回ることが多い。一部の学術研究と最近の膨大な数のネット記事は、マルチタスクに否定的な見解を示している。取り組む課題を頻繁に切り替えることにより、脳の処理能力が大幅に浪費されると主張し、それを理由に、マルチタスクが生産性を低下させることは避けられないと結論づけるものがほとんどだ。
あなたは動画のゴリラを見つけられるか
こうした主張との関連でよく知られている動画がある。その動画は、注意が散漫になると、見落としをしやすくなることを浮き彫りにしている。数人の人たちがバスケットボールのパス回しをしている動画だ。
その動画を実験参加者に見せて、白いユニフォームを着たプレーヤーたちがおこなうパスの回数を数えるよう指示する。すると、少なくとも半分の人は、動画が始まって数秒後にゴリラが真ん中を横切ったことに気づかなかった。

