テクニック重視の「整形美人」はNG
孫正義、柳井正、稲盛和夫、豊田章男、スティーブ・ジョブズという5人のカリスマ経営者が、プレゼンテーションやスピーチでどのような話し方をしているのか、次回以降で詳しく検証していく。匠氏、佐藤氏、鈴木氏の3人に映像を分析してもらい、それぞれの専門分野から意見を聞かせてもらった。カリスマ経営者たちの話し方から、ビジネスマンが真似すべき点、真似してはならない点を明らかにしていきたい。
表に掲げた「理想的なコミュニケーション」の9項目は、代表的な着眼のポイントと望ましい水準だ。5人の経営者についても、これらのポイントを詳しく見ていく。
検証の対象とした映像はネットで見られるものが主なので、映像を見ながらこれら各ポイントと水準を理解することができる。自分がプレゼンテーションするときのチェックポイントになるだろう。ただ、意識して練習するだけでなく、自分の姿をムービーに撮影して客観的にセルフチェックすることが望ましい。自分の無意識な動作や口癖などにいくつも気づくはずだ。
ただし、表面的なテクニックに気を取られ、コミュニケーションや自己表現の本質を見失うのは危険なことだ。
「フレームワーク的な発想や、図解化されてわかりやすいものを知ると、それだけで理解したつもりになってしまいますが、その部分だけ真似ても逆効果になることもあります。ある一面だけ矯正して、全体のバランスを失うこともある。顔の一部に手を加えて整形美人になっても、10年後に歪んだ顔になってしまうのでは意味がありません。それと同じで、自分らしさを保ちながら、必要な部分を磨いていくことのほうがはるかに重要です」(匠氏)
5人のカリスマ経営者は、それぞれの個性を活かして自らのスタイルにたどり着いている。安易に真似をするのではなく、それが自分のスタイルに合っているかを確認しながら取り入れていくことが話し方上手になる第一歩だろう。