皇族数確保策に関する「立法府の総意」がついに取りまとめられた。男系男子の養子案にはどのような意味があるのか。皇室ウオッチャーの中原鼎さんは「皇室ですら養子縁組なさるということが、社会に根強い偏見の解消につながり、ひいては少子化という静かな有事を反転させる力になりうるのではないか」という――。
2023年6月19日、インドネシアのボゴール宮殿でジョコ・ウィドド大統領夫妻による歓迎行事に出席された天皇皇后両陛下
2023年6月19日、インドネシアのボゴール宮殿でジョコ・ウィドド大統領夫妻による歓迎行事に出席された天皇皇后両陛下(写真=BPMI Setpres/PD-IDGov/Wikimedia Commons

少子高齢化は“まさに有事”

人口減少に歯止めが掛からない――。

日本の総人口がおよそ1億3000万人と数えられたのも、もはや過去の話である。2025年の国勢調査によれば、約1億2305万人。前回から約309万人も減少してしまった。

人口減少の原因は、もちろん少子化にほかならない。厚生労働省が今年6月3日に発表した人口動態統計(概数)によると、令和7(2025)年の合計特殊出生率は過去最低の1.14で、10年連続の低下となった。

同統計では、出生数も67.1万人と過去最少を記録した。国立社会保障・人口問題研究所が令和5(2023)年に公表した予測では、67万人台となるのは令和22(2040)年とされていたから、国の想定より15年ほど早いペースで少子化が進行していることになる。

「このままいくと、西暦2900年には日本人は4000人になるんだそうですよ。西暦3000年になると日本人って1000人になるそうですよ。結局、国はなくなっていくわけで、これが目に見えないけれどもじわじわと進んでいる、これを有事と言わずして何と言う」

上に示したのは、平成27(2015)年7月7日の参議院内閣委員会における石破前首相(※当時は安倍政権の国家戦略特区担当大臣)の答弁だ。政界では近年、人口減少問題をこのように「静かな有事」などと表現することが増えてきた。

3000年には総人口がわずか1000人になってしまう――。少子化のペースが15年も早まったということは、ただでさえ絶望的なこの予測値もますます悪化してしまったはずだ。まさに有事と呼ぶほかあるまい。

「立法府の総意」がようやくまとまった

6月10日、皇族数確保策に関する「立法府の総意」がついに取りまとめられた。皇族女子の生涯身分保持と、養子縁組による旧宮家男子への皇籍付与を認める内容であり、伝統を尊重する筆者にとっては喜ばしいことに、男系継承を事実上強化するものとなる。

長きにわたる議論もようやく一区切りを迎えることになりそうだが、反対論者の最後の抵抗というべきか、先に述べた出生率・出生数を引用しての「女系天皇」論もここにきて目立つようになった。

とはいえ、そのような主張は今に始まったものではない。平成17(2005)年の小泉政権下での「皇室典範に関する有識者会議」も次のように述べている。

「社会の少子化の大きな要因の一つとされている晩婚化は、女性の高学歴化、就業率の上昇や結婚観の変化等を背景とするものであり、一般社会から配偶者を迎えるとするならば、社会の出生動向は皇室とも無関係ではあり得ない」

筆者は民間の傾向がそのまま皇室に当てはまるわけではないと考えるが、一般社会における晩婚化が未来の后妃選びにも影響しうるという考え方は、なるほど一定の説得力を持つものではあろう。

しかし、むしろ少子化が深刻な社会問題となっているからこそ、別の視点があってもよいだろう。歴史を紐解けば、皇室はけっして一般社会の影響を一方的に受けるばかりの存在ではなかったからだ。